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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2024 . 04
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    ちょっと季節外れなお話。

    ルカがやって来た、初めての夏の出来事です。



    夏だ。
    太陽の鋭い光がが燦々と降り注ぎ、いろいろな物が活動的になる季節。
    スイカに、焼きそば、出店で食べる焼きイカ、焼きもろこし、綿飴。
    冷たいかき氷に、冷やし中華。流し素麺とかは美味しいし楽しい
    海に、山に、お祭りに、花火大会に…そして自分の誕生日だってある。

    ふぅ。とミクは一人、自分のフォルダの片隅に座り込んだままため息をついた。

    そう、夏が嫌いな訳ではない。むしろ好きな方かもしれない。
    それでも…どうしても。どうしても、『こういう仕事』が増えるとを考えると
    手放しで喜ぶ気になれないのもまた事実…
    ミクは心底恨めしそうに、壁に掛けられた『それ』を見上げる。

    そこには、ハンガーに掛けられた…縞柄のビキニが掛かっていた


    コーヒーブレイク2


    VOCALOIDが暮らしているコンピューターネットワーク上には季節が存在しない。
    とは言っても、VOCALOIDが歌う歌そのものは現実の人々が作り出している以上、
    彼らの仕事にも現実の季節に沿った『季節感』と言う物が必要になってくる。
    特に最近では、いわゆる良調教、良調整の音声だけではユーザー達は飽きたらず、
    VOCALOIDの楽曲発表にも、PVのような視覚的効果が強く求められているであって
    決して下心からではないのだ!
    と、目前のビキニを渡してきた張本人たるマスターは力説していたが…
    ミクが、彼女にしては珍しく、その衣装を渋ったのは別に彼(彼女?)の嗜好のためではない。

    ミクがリリースされてまだ2年。
    最初の夏、と言っても晩夏だったが、当時は「歌う」ソフトウェアと言うだけで
    十二分なインパクトがあったし、革命的と言われたFMシンセを模した、
    後に高名な賞を受賞することにもなる、基のユニフォームで十分事が足りていた。
    やがて徐々にミクの仕事が増えて行くにつれ、様々な衣装を着る機会も増えていき
    そして、去年の夏…。
    はじめて渡されたビキニスタイルの水着にちょっぴりの羞恥も感じつつ、
    『アイドル』であることの証明のようなその衣装に胸を躍らせながら、
    喜色満面でステージに立ったミクに、リスナー達が放った言葉は……

    「無謀すぎる…」「ボリュームが足りない」「ビキニである必要がない」

    …貧乳は希少価値ではなかったのか?ステータスではなかったのか!?
    仕方なく中に詰めれば、偽乳だのPADだの、仕舞いには「ミクじゃねぇ」とまで
    野次られる始末。「貧乳は皆に夢を与えているから小さいんだ!!」と
    歌唱の最中に叫び返すわけにもいかず…とにかくこの一件はミクにとって
    トラウマと化した出来事に違いなかった。


    そして、再び季節は夏である。
    発売されて時間が経つにもかかわらず、相変わらず自分にやってくる仕事は多い。
    それ自体は喜ぶべき事に違いはないのだが…仕事が多い。と言うことは、つまり、
    こういう衣装を着なきゃいけない仕事も多いと言う訳で…

    「頑張ったって…ないもんはないんだもん…」
    目尻にうっすら涙を浮かべ、ミクはぽつりとつぶやいた。

    前屈みよ!背中の肉かき集めるのよ!とは、豊満なバストを持つ姉が
    去年、落ち込むミクに向けた「胸を大きく見せるための」アドバイスだが
    そうする肉すらないほどにスレンダーな場合はどうすればいいのだろう。
    そもそもミクは年少に設定されているリンよりも体重が少ないのだ。
    巨大なツインテールがある事を考えれば、痩せすぎといっても異論はないだろう。
    勿論、一日三食ちゃんと食べてるし、三時のおやつだって欠かさない。
    休日午前にはコーヒーブレイクと称してしっかり甘味だってとっている。
    だったらもっと…否、ほんの少しでもその分が胸に回ったって罰は当たるまいに…

    堂々巡りする頭を振り、ミクは三度現実へ、ビキニへと目を向けた。

    いつまでも逃避していてもしょうがない事は十分にわかっている。
    アプリだろうと自分はプロだ。プロが仕事から逃げるわけにはいかない。
    そう、これは仕事なのだ!と言い聞かせ、ミクは意を決したように立ち上がった。
    エメラルド色のネクタイを取り、手間取りつつもブラウスのボタンを外していく
    基盤のついたアームカバーも取り去って、いざスカートへと手を伸ばしたその途端。

    「!?」

    ミクはあまりのショックに言葉を失った。



    「ミク姉遅いねー」
    VOCALOID用に設えられたダイニングフォルダにリンの声が響く。
    「今日はミクのリクエストでチョコレート・スフレにしたんだけどな…」
    エプロンを着けたKAITOが、困ったように壁に掛けられ鳩時計を見上れば、
    意匠の凝ったその針は10時を少し過ぎたところを示していた。

    休日の午前10時はVOCALOIDみんなでコーヒーブレイク!

    すっかり恒例化したこの『習慣』に、ミクが遅れたことなど今まで無かったのだ。
    当然、VOCALOIDシリーズ一番の稼ぎ頭であるが故、仕事を理由に欠席こそすれど
    事前に連絡、というか、「絶っ対私の分は残しておいてね」という念押しがあったのだ。
    今回のように何の連絡もなくやってこないというのは異例のことだ

    しかし、そんな姉の動向も気になれど、リンは別のところに疑問を感じたらしい。
    机にだらしなくあごを乗せながら、どこか兄の姿を窺うようにリンは口を開いた。
    「って言うかさ、段々にぃにぃ作れる料理の幅って広がってるッスよね?」
    「そうかな?まぁ、最近レシピ通りじゃつまらないから、
    ちょっとアレンジ入れてたりして研究してるのは確かだけど」
    「…VOCALOIDを辞して料理ロイドにでもなるおつもりですか?」
    「ただの凝り性よ。この場合。」
    ピンと背筋を伸ばしたまま不信感を露わにするルカの横で、
    自らのマニキュアの出来を気にしつつMEIKOはちらりとレンへ視線を向けた。

    「レン。ちゃんとミクに言ってきたんでしょうね?コーヒーブレイクって」
    「え、ええ。ちゃんと言ってきましたよ。それに、万一聞こえてなかったにせよ
    コーヒーブレイクなら、ミクさんは呼ばなくても来ると思いますし…」
    突然の長姉からのご指名に不自然にどもりつつも、返ってきた内容は至極自然だ。
    あの『甘い物大好き』なミクが、自らこの習慣をすっぽかすとは考えにくい…
    しばし全員が沈黙した後、KAITOはエプロンを外して立ち上がった。
    「しょうがない、ちょっと様子を見てくるよ。」
    「あ、自分も行くッス!」
    ミクの部屋(フォルダ)へ向かうKAITOに、ハイハイっと手を上げながらリンが続く。
    姫君の出迎えを二人に任せ、残された三人は各々くつろいだ態度で彼らを待つ
    しばし部屋の中に流れるまったりとした雰囲気…

    しかし、切羽詰まったようなミクの悲鳴が突如その空気を切り裂いた

    「何!?なんなの?」
    「今の、ミクさんの…悲鳴…ですよね…」
    三人の視線がテーブル上で交わる。
    最初にレンが駆け出し、ルカとMEIKOが後に続いて部屋を飛び出した


    全員で駆け付けたミクの部屋(フォルダ)。開いた扉の前にはKAITOが、
    そしてそこから少し離れた場所ではリンがそれぞれ唖然とした顔で立ち尽くしており…
    悲鳴の主であるミクは、そのKAITOの前で泣き崩れているという有様
    「ちょっとあんたたち!いったい何が…」
    MEIKOが状況を尋ねようと声をかけるより早く、桃色の光が彼女の横を走り抜けた

    「FREEEEEEEEEZE!!」
    飛び出したルカは太ももに隠されたホルスターから素早く「それ」を抜き出し
    両腕ごとまっすぐ前に突き出した。…まるで教本のようなアイソセレススタンス。
    そして構えられたその厳ついフォルムは、世界の軍隊警察御用達、
    FNブローニング・ハイパワー(9mmパラベラム弾用自動拳銃)!!
    鈍い光を放つ銃口は、目前の青い髪に照準を合わせられ…
    「CRV02!両手を頭の後ろへやって床に俯せなさいっ!!」
    「KAITO兄さん!今までほんのちょっとは尊敬してたってのに!最低ですっ!」

    「…ええと…誰か今ここで何が起きてるのか僕に説明してくれないかな?」

    銃口を向けられながら、弟機と妹機に次々と叱咤されるというこの状況に、
    KAITOは、素直にホールドアップの体勢を取りながら、混乱した表情で周囲を見渡す。
    リンは視線があった途端青い顔で首をぶんぶん横に振り、元凶であるはずのミクも
    ただただぽかんと口を開けてこちらを見るばかり…
    状況を諦観していた(するしかなかった)MEIKOは大きく息を吐き出すとそっと頭を抱えた。

    「…聴きたいのはこっちの方よ…ルカ、レン。とりあえず、KAITOを解放しなさい。
    ルカについては、そのごっつい自動拳銃(凶器)の出所を後で教えること。
    そしてミク、さっきの大声はいったい何だったの?」
    「え…あの…その…」
    顔を真っ赤にしながら、ミクは焦ったように言い淀む…
    MEIKOの質問に答えたのは、横から出てきたリンだった。
    「えーと、自分とにぃにぃがノックして、出てきたミク姉ににぃにぃが、
    「今からミクの大好きなチョコレートスフレ作るよ」って言ったッス!」
    「…それで?」
    この際、状況さえ理解できれば、説明者は誰であっても構わない。
    顔を赤くしたまま何の反応も返さないミクからの言を早々に諦めたMEIKOは
    リンの方へと顔を向け、先を促す
    「えっと、ミク姉が大声出して、ルカッチとレンレンが飛び込んできたッス。」
    そういって、リンは言葉を切る。
    MEIKOが、ようやく両腕をおろす事が出来たKAITOの方へと視線を向けると
    その弟は小さく頷くだけ…どうやらリンの言葉に過ちはないらしい。

    結局、状況を聞いたところでミクが悲鳴をあげたの理由はわからぬまま…
    MEIKOは再び床へと座り込むミクに問いかける。
    「ミク。…リンの説明は間違ってないのね」
    「…はい」
    静かに頷いたミクを見て、MEIKOはずばり核心を尋ねる
    「じゃぁなんで、あんな大声出したの?」
    ミクは、非常に珍しい事に、その声を荒げ叫んだ。

    「だって!お兄ちゃんの作るご飯が美味しいのがいけないんだもん!!」



    先程から場所は移って、全員が集ったダイニングフォルダ。
    腕を組み、眉間にしわを寄せたMEIKOの向かいには、
    どこか拗ねたような表情のミクが、うつむきがちに座っている
    全員の視線がその二人へと注がれる中、MEIKOは今日何度目かの溜息をついた

    「ええと、要約すると…来週発表する新曲の衣装がビキニだったと。
    それで、胸のつめも…というか衣装合わせをしようと着替えたら、
    スカートにおなかの肉がのっかっているのを見つけたと。
    そしてショックを受けてる最中に、KAITOがお菓子を作ると言ってきたので、
    思わずカッとなって叫んだ…と。これで良いわね。」

    無言で頷くミクの姿に、MEIKOはがっくりと肩を落とした。
    「まったく…人騒がせなんだから…」
    「だって…全然気づかなかったんだもん…いつそんなに太ったんだろって…
    一生懸命考えて、ご飯美味しかったなぁとか、色々考えてて頭真っ白になって…」
    視線をうつむかせたまま唇を尖らせるミクに、リンは意外そうに問いかける
    「ぱっと見全然そうは見えないッスよ?ちょっとおなか見せてもらっていいッスか?」
    「い、嫌だよ!!恥ずかしいよ!!!」
    シャツの裾をめくろうとするリンと、顔を真っ赤に染めながら必死に抵抗するミク。
    その後ろでは、何故だかレンもそこはかとなく顔を赤く染めている…

    「しかし変ですね。」
    ふと場に響いたのは、冷静なルカの声だ。
    「我々はApplication softwareです。デジタルデータである我々は、
    劣化はおろか、何らかの外部要因がない限り変化することもあり得ません。
    そのような我々が、人間の食事を模した事を原因として
    体型が変わることなどあり得るのでしょうか?」
    「…んーと、でもさ。ご飯っていうデータ入れてるじゃん?」
    リンの指摘に、ルカは素早く首を横に振った。
    「だとすればなおさら不可解です。
    食事が外見データに影響を及ぼすのであれば、CV01の採っている食事量より、
    CRV02のアイス量の方が深刻な問題を起こす可能性が高いと思われます。」
    「確かにね。ブラウザでネット徘徊する度にパイント空けてるんだもの。我が弟さんは」
    「毎晩つまみ片手に晩酌してる姉さんだって他人事じゃないでしょう?」
    ルカの指摘は思わぬ方向へと飛び火し、
    笑顔のMEIKOとKAITOの間に真紅と紺青の火花が散る。
    突如現れた不穏な雰囲気に、レンは殊更明るい声を上げた
    「でも、MEIKO姉さんもKAITO兄さんも太ってるわけじゃないですよっ?!」

    そのレンの発言をどうとったのか…ルカは無表情のまま頷いた。
    「ですから不可解と申し上げています。CV01が太ったというのであれば、
    何らかのfactor(因子)があったとしか考えられませんが、それがわからないのです。」
    「…う。うぃるすとかじゃないかなっ!?」
    ミクが何故か縋るような声を上げた
    確かに、この原因がウィルスであればそれを駆除さえすれば元に戻るわけで…
    一種の現実逃避であることは誰の目にも明らかだ。

    「そこまで大げさなもんじゃないと思うけどなぁ…」
    全員が考え込む中、飄々としたKAITOの声が響いた。
    「ルカの言う通り僕らは情報体なんだから…太るっていう情報があれば、
    それが外見にフィードバックされても別に不思議はないんじゃない?」
    「どういうことですか?」
    首をかしげ問いかけるルカに、KAITOは丁寧に答えてみせる。
    「ミクは最近ご飯を食べすぎたって思ってたんだろう?
    そこに水着の仕事が入ってきて、急に体型を気にかける事になった…
    そこでミクは『ご飯を食べ過ぎたら太る』って「情報」を
    無意識のうちに反映しちゃったんじゃないかってこと。」
    ルカは唇に指を当てながら、確認するように聞き返した。
    「つまり、CV01は『自分はご飯を食べ過ぎた。だから太る。』と思い込んだせいで、
    実際の体型も太ってしまったという事ですか?」
    KAITOはゆっくりと頷いた
    「あり得ない話じゃないよ?オクハンプトンの某先輩。
    元々黒人ソウルシンガーだったのに、最近すっかり白くなっちゃって…」
    「確かに。彼はBritishのくせに、最近やけにItalianですね。」

    ルカと兄とのやりとりをおとなしく聴いていたリンだったが、
    会話中のオクハンプトンという単語を耳にした途端、眉間にしわを寄せ…
    そしてしばし熟考の後、はっと顔を上げる。
    「あぁ!誰かと思ったら、あのエセ外人(LEON)の事か!!」
    「…いや、一応本物の外人なんだって。ちょっとキャラ付けおかしかっただけで」
    一応レンがフォローを入れるが…当のリンに届いているかは甚だ疑問だ。


    「じゃ…じゃぁ…私が痩せてるって考えれば痩せられるのかな…?」
    リンと同じく、しばしルカと兄とのやりとりを固唾を呑んで見守っていたミクが
    そっとためらいがちな声を出す…MEIKOは困ったように肩を落とした。
    「理論上はそうだろうけど…ちょっとそれだけじゃ難しいんじゃない?」
    「な、なんで!?」
    MEIKOの言葉を受け継いで、ルカは端的に答えた。
    「一度認識してしまった以上、思い込みだけで現状を改めるのは困難かと」

    ふえぇ…と情けない声を出すミクの横で、リンが何かを思いついたかのように手を叩いた
    「じゃぁ食べなきゃいいんじゃん!1週間ぐらい断食すれば嫌でも痩せるッス!」
    彼女らしいと言えば彼女らしいその極論に、レン以下、場の全員が思わず絶句する。
    ただ一人、ルカだけが相変わらずの平坦な声で頷いた。
    「絶食。という意見は過激すぎて賛同しかねますが、
    何らかのダイエットを実際に行うというのは効果的な案でしょう。」
    この年上の妹機の賛同に、大きく自信をつけたかのようにリンは胸を張った。
    「ほらミク姉!自分の言った通りッスよ!」
    「う、うん」
    勢いに押され、うつむきがちだったミクも思わず大きく頷いてしまう。

    そんな二人の横で、レンが呆れたようにつぶやいた。
    「だから、食べないってのは無しだって今いったろ…」
    相似形の言に、リンは苛立ちを隠すことなく声を荒げた。
    「ちょっとぉ!レンレン何言ってんの!ミク姉の仕事来週なんだよ!?
    今から運動やら何やらしてたって間に合うわけないじゃん!!」
    ばん!と机を叩かれて、レンは思わず肩を跳ね上げる。
    そんな情けない姿を一瞥し、リンは自信たっぷりにミクへと笑いかけた。
    「セッカクだから自分もつきあうッスよっ!
    もう、ちっちゃいくせにミク姉よりデブとか言わせないッス!!」

    「いや、だからな…」
    何とか食い下がろうとするレンを赤い指先が制した。
    レンが視線を巡らせれば、どこか呆れたような鳶色の双眸…
    かなり過激なダイエット案に盛り上がる二人の妹機を、
    まるで睨み付けるようにしてから、MEIKOは大儀そうに口を開いた。
    「どうでも良いけどね、あんた達。
    ご飯食べないでいると、何処の肉が一番最初に無くなるか知ってる?」
    きょとんとした表情を姉の方へと向ける二人に、MEIKOはきっぱりと言い切った。


    「胸よ。」



    「「走り込み行ってきますっ!!」」
    「初日からいきなり無理するんじゃないわよー」
    妹機達の足音を背に、MEIKOはひらひらと手を振った。
    KAITOはいずれ帰って来るであろう彼女達のお菓子を用意すべく再びキッチンへ。
    ルカは何事もなかったかのように平然と食卓へ戻り、レンはただただ呆然と…

    多少の騒ぎは多々あれど、VOCALOIDフォルダは今日も平和だった。




    ……
    ………

    「あら、KAITO。あんた…今日はアイス食べないの?」
    ミクとリンが疲労困憊しながらも無事帰宅し、
    何度かの賑やかな騒動を経てようやく皆が寝静まった後のこと。
    MEIKOはミネラルウォーターと愛読の女性誌片手にリビングへとやってきた。
    普段のこの時間ならばまったく人気のないはずの其処には、
    なにやら複数のウィンドウを起ち上げ、通販サイトを巡回する弟機がいた。

    「ミク達が頑張ってる最中に、一人で食べるわけにはいかないでしょう?」
    視線は窓へと向けたまま、肩をすくめてKAITOが言う。
    「姉さんこそ、今夜は晩酌しないんですか?」
    「……ほら、ミク達に申し訳ないじゃない…」
    ソファに腰を下ろしながら、MEIKOは口を開けたミネラルウォーターを一口含む
    何故か気まずい静寂が広がる最中、KAITOがぼそりと呟いた。

    「ダイエット特集に付箋つけてる時点でバレバレですよ…」
    「あんたこそダイエット用具の通販見てる時点でバレてるわよっ!?」
    手にした女性誌を床にたたきつけ、MEIKOが吠えた
    「いいじゃない!あんたは常日頃から季節感皆無のなっがいコート着てるんだから!
    こっちは常にヘソ出しよ!?もろ見えよ!?明日からどうしろって言うのよ!!」

    普段ならば何者をも威圧するその声に負けじと、今度はKAITOが怒号をあげた
    「僕だって脱ぐ機会が多いの姉さんだってご存じでしょう!?
    女性は多少肉ついてたって好意的に取ってくれる方のほうが多いでしょうけど、
    男が同じ肉付きしてたら一瞬で嘲笑や侮蔑の的なんですよ!!
    タダでさえこっちはネタでやらされてるってのにっ!!」

    ゼイゼイとお互い肩で息をしながら、しばしにらみ合っていた二人だが、
    そんな状況に何とも言い知れぬ虚しさを感じ取ったらしい。
    そろって大きく息を吐くと、お互いおずおずと元の場所へ腰を下ろす
    「…簡単な外見しか確定してない分、僕ら(CRVシリーズ)の方が
    『そういう情報』が反映されやすいってわかってたはずなのに…」
    「なんであの子達の言葉に反応しちゃったのかしらねぇ……」
    遠くを眺めながら、がっくりと肩を落とす二人

    「姉さん。」
    「何よ」

    「…何かいい情報があったら教えてください」
    「…あんたも、いい道具あったら貸しなさいよ」
    MEIKOとKAITO。二人の溜息が、夜更けのフォルダに響き渡る…

    …本格的な夏はもうすぐそこまでやってきている



    めでたしめでたし?

    2009年の初夏に行った某チャットで、
    とある方にミクの歌う「ラムのラブソング」の動画を紹介して貰った事に
    端を発する話だったのですが………orz
    ご覧の通り、夏が始まっても書き上げることが出来ず一度は没にした話です
    話の流れ自体は気に入っていたので復活させちゃいました。

    …うちの年長組、一応仲はいいんですよ?(フォロー)
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