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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2024 . 04
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    お礼SSで使用していた、がくぽとリンの縁側話です。





    神威さんと愛刀美振


    穏やかな春の日が降り注ぐ縁側に腰掛け、
    神威がくぽは抜き身の愛刀を眺めていた。
    設えられた庭園の端。
    先日まで見事に隆盛を誇った染井吉野の僅かな花片が、
    すうと刃先を掠めていく中、彼は陣羽織から懐紙を取り出し丁寧に汚れを拭っていく

    「あぁあ…結局今年もみんなでお花見できなかったなー」
    汚れを落とし、打ち粉を打つがくぽの背後から高い声が上がる
    がくぽの腰掛ける縁側に寝そべりながら、庭を眺めるリンの声だ。
    彼女の前には香りの良い緑茶と、東京の老舗和菓子屋麻布青野総本舗の桜饅頭。
    そして、打ち粉を払う動きに合わせ上下する「楽」の文字がある。
    粉を払い一層輝きを増した虹色の斑紋を眺めながら、がくぽは答えた。

    「今年はルカ殿が来られて皆大わらわでしたからな…
    昨年はいかがなされたのですか?」
    「がっくんのリリース発表で大騒ぎだったんだよー
    ネタかと思ってたらマジなんだもん。しかも別メーカーだしー」
    「それは失礼を。」
    内容とは裏腹のさらりとした口調
    リンのこぼす不満が本気ではないと分かっているからだ。
    半年前ではこうはいかなかっただろう。彼女の言葉を生真面目に受け取り、
    「面目ない!此処の場でお詫びを!!」と、その場で腹を切りだしかねなかった。
    彼が本来の所属元であるオオサカが、
    情操教育の名目でサッポロへ無理矢理留学させた成果の一つなのだろう。

    饅頭を頬張りつつのどかな庭を眺めるリンの視界を、
    不意にがくぽの大袖が横切った。
    刀を片手に持ちながら彼が指さす方を見れば、
    既に緑の葉が茂りかけた染井吉野、
    そして、その先には複雑に入り組んだ大きな藤棚が見える。
    「桜の季節は過ぎてしまいましたが、もうじきそちらの藤が咲きますぞ」
    「藤かぁ…確かがっくんの髪の毛とおんなじ色した花だよね」
    「ええ。某(それがし)も知識としてしか存じませぬが…」
    「咲いたらさ、ここにみんなでお花見に来ていい?」
    がくぽはそっと微笑み、静かに頷いた。
    そして、再び視線を手に持つ刃へと向け直す。
    リンもつられてマジマジとその鋭い輝きを持つ刀身を見上げた

    「ところで、ミブリ…だっけ? しばらく見なかったけど、どしたの?」
    がくぽの持つ楽刀、美振(がくとう・みぶり)。それは武器ではなく、
    その刃の紋様により振りおろされた相手のビート感を刺激し、
    感化することで、どのような相手であっても
    共に音楽を楽しむ事が出来るようになる楽器なのだと説明を受けている。
    「音楽を楽しむ」事が存在意義に近い自分達VOCALOIDと暮らす中では、
    まず利用する機会はないであろう楽器だが、
    がくぽがそれを殊更大切にしているのは知っていた。
    そして、何故かその大切な楽器が、
    ここ数日彼の傍らから消えていたことも。
    がくぽは、うかがうようにリンを見た。
    「…KAITO殿にお預けしていたのですよ。」
    「にぃにぃに?なんでまた…」
    刀をまっすぐ外へ構えながら、がくぽは言葉を続けた。とんでもない一言を

    「対ウィルス用の攻撃プログラムを見繕って欲しいと某が頼んだのです。」

    次の瞬間、リンは飲んでいた緑茶を盛大に噴き出していた。
    「!?ちょっ…!?え?マジで??はぁ!?なんで!?」
    リンが混乱するのも無理はない。
    歌うことをメインに作られたVOCALOIDに、
    対ウィルス用の武器などどうして必要になるというのか。
    サッポロのM/F(メインフレーム)や社内ネットワークで過ごすだけなら
    自分達を守護してくれる優秀な防護壁(ファイアーウォール)があると言うのに…
    唖然とするリンに対してのがくぽの返答は、さらに彼女を愕然とさせた。

    「公衆回線(インターネット)に忍んで出かけられている
    リン殿やレン殿をお守りするためですが?」
    がくぽはなんでもない事ようににっこりと笑った。
    「普段は鳴りをしずめども、公衆回線から悪者は消えておりませぬ。
    蠕虫(ワーム)や木馬(トロイ)は申すに及ばず。
    新たに造られし異形奇体の者どもが騒ぎをおこすことも数知れず…
    かの様な所へその身ひとつで降りていかれる妹君達を見て、
    KAITO殿がどれほど心配なさっているか…
    想像できぬリン殿ではありますまい。
    近頃はKAITO殿もお仕事が忙しく、
    常に見守っているわけには行かなくなった故、
    微力ながら某(それがし)がと、守護の役目を願い出たのです。」
    「…ちょ、ちょっとまってよ!?」
    詩を諳んじるかのように淀みなく言葉を紡ぐがくぽをリンは必死に遮った。

    「なんでがっくんがあたしらが内緒でネットに降りてるの知ってるの!?
    てか、一人でネットに降りるプログラム組んだのにぃにぃじゃん!?
    なんでにぃにぃはオッケーで自分が一人だとマズイわけ?」
    「女子供を守るが男の使命です。」
    実に誇らしげな笑顔で、がくぽは微笑んだ。
    「それに。KAITO殿に関して護衛が不要というのは…
    妹君であるリン殿の方が一番ご存知のはずですが?」
    「そりゃ、にぃにぃはあたしが生まれる前から飛び回ってるけどさぁ…」
    白銀のコートとアイスブルーの長いマフラーをなびかせながら、
    飄然とネットの海を飛び回る長兄の姿を思い浮かべつつ、
    リンの言葉尻が小さくなっていく…
    「ご理解いただけましたかな?」
    「…理解はしたけど、納得してないよ?」
    諦め悪くリンが最後の抵抗をみせるが、
    その言葉はがくぽの聴覚デバイスには届かなかったようだ。
    「ふむ。幸い美振も戴いたプログラムを気に入った様子…
    次にリン殿が公衆回線へ出向かれる際は、不肖者ながら、
    某、御御伴させていただきます。」
    「…なんか決定事項になってるし…」
    刀を収め、神妙な面持ちで頭(こうべ)を垂れるがくぽを
    複雑な視線で見つめながら、リンは大きな溜息をついた。



    これ書いた直後のエイプリルフールにGUMIが発表されました。
    結局藤の花見どころじゃなかったというリアルオチ…

    今年のエイプリルフールも何かが来るのか…?
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