忍者ブログ
日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2024 . 04
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • WEB拍手
    連絡はこちらから 現在お礼SS掲載中
    プロフィール
    HN:
    yasaka
    性別:
    非公開
    自己紹介:
    yasakaの名前でにゃっぽんや
    ピアプロでお世話になってます。
    ×

    [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

    しばらく間が開きましたが、相も変わらずのっぺりと平常運行です。
    今回は VOCALOIDと匂いのお話。そして相も変わらずカイミクです。



     神威さんと匂い花
     
    「………。」
    「どしたのがっくん。ハトがさんだんじゅー食らったみたいな顔してさ」
    「散弾銃じゃねぇ豆鉄砲だよ。それだとハト即死じゃねぇか。」
    ぼんやりと立ち尽くすがくぽさんにリンが脳天気に声をかける。
    もはやバグとしか思えないリンの無茶苦茶な言語センスに僕は思わずつっこんでしまうが…
    当の声をかけられた、がくぽさんは対して気にならなかったようだ。
     
    「あ、いや。今日の仕事でちょっと分からぬ箇所がありまして
    KAITO殿にご教授いただこうかと伺ったのでありますが…」
    「まぁ、確かにあの状況は声かけづらいよね」
    がくぽさんの言葉を引き継ぐように、リンは何度も頷いた。
    話題になっているKAITO兄さんは、さっき僕が見たときと変わらない姿で、
    このリビング奧、いつもの定位置と言える3人掛けのソファに座っている。
    そう…そんないつも通りの光景のはずなのに、声がかけづらくなっているその理由は
    彼の、その膝の上にミクさんが腰をかけ、なんだか楽しそうに話し続けているからだ。
    かく言う僕も、さっきその『バカップル乙』的な光景を目の当たりにしたときは、
    さっきのがくぽさん並に凍り付いたのだけど、キャッキャと笑うミクさんの楽しそうな声と
    「じゃれてるだけだから安心してはいっといでー」という間の抜けたリンの声に
    どうにか気を取り直し、彼らから少し離れたここに腰を落ち着けたばかりだったりする。
     
    「というかさ、KAITO兄さんとミクさんはさっきから何をしてるんだ?」
    「ネイルアート。どっかのマスターさんに教わってすっかりはまったらしくてさ」
    どうやらずっとここにいたらしいリンは、どうやら詳しい事情を知っているらしい。
    その言葉を聞いて、再度色々と問題のある二人の方へと視線を向けると、
    KAITO兄さんの手にミクさんが一生懸命何かを塗りつけているようだ。
    ソファ前の机の上にはいろんな色のマニキュア瓶と、道具なんかも見える。
    どうしてその体勢なんだ?とは思うのだけど、あのミクさんのことだ
    「このほうがぬりやすいの」の一言ぐらいで、たいした理由なんか存在しないに違いない。
     
    「それで、練習した技を見せつけたいミクさんに懇願され、
    案の定断り切れなかったKAITO兄さんが爪を塗られているという状況なわけだな。
    しかし、大丈夫かな。その…ミクさん。あんまり器用な方じゃないだろ?」
    僕のオブラートに包んだ発言に対して、どこか誇らしげに見せつけてきたリンの両手の爪は
    いつもの緑色じゃなく、なんだか、そう、とっても個性的なネイルアートが施されている。
    なぜだか強烈な除光液臭が未だに漂うその10本の指先は、右手の親指から左の指へと進む度、
    破滅的だった技巧がグラデーションのように上達していて…
    「両手フルセット、計6時間。」
    「すっごく頑張ったんだな。素直に褒め称えさせてくれ」
    指10本の合間にネイルアートが格段に上達したミクさんに対しての賞賛の言葉か、
    危なげなその施術に6時間耐え続けたリンに対してのものかは明言しないでおく。
     
    「となるとKAITO殿は当分動けないということですかな?」
    「かもねぇ…ミク姉スイッチ入るとそう簡単には戻ってこないもん。
    一応片手は終わってるみたいだけど、まだ当分かかるんじゃないかなぁ」
    リンの言葉を聞くに上達するにつれ多少は早くなったそうだが、
    それでも指10本で6時間というのだから、2、3分では終わらないだろう。
    質問するだけなら、近くから声をかければ良いだけのような気もするが、
    現状下手に近づけば、次の被害sy…もとい、お客さんにされかねない。
     
    「ところでさ、がっくんの質問って何?自分らでよけりゃ答えるよ?」
    「ええ…実は先程まで行っていた動画の撮影で、一つ納得できないところがありまして」
    「ふんふん。それで?」
    すっかり困り顔になってしまったがくぽさんに、リンが調子よく声をかけていく。
     
    がくぽさんは、本当に驚くぐらい几帳面で真面目で(サッポロの人に言わせると
    人に従うアプリケーションとしては、これぐらい従順さが普通らしい。)
    将来オオサカで生産されるVOCALOIDのリーダーになるすごいボカロなんだそうだ。
    ここサッポロには、僕も含めた先輩ボカロ達からいろんな事を教えてもらう為の
    『留学』という名目でやってきているんだけど。
    でも、リンはそんながくぽさんを新しく来た自分の『弟分』かなにかと勘違いしてて、
    こうして彼が困っていると勝手に出しゃばって来て勝手なことを教え始めたりするんだ。
    がくぽさんも相手にしなきゃ良いのに、「年少とはいえ先達の忠言ですから」と真面目顔で
    聞き入ってるんだから始末に負えない。
    今回もあまりに変なこと教えるようなら自分が軌道修正しなきゃなんないのだろう。
     
    「それで…KAITO殿がミク殿に、その、叩かれる場面なのですが…」
    口で説明するのが難しくなったのか、それともただ口にしたくない内容なのか、
    がくぽさんは袖の小物入れから小さく折りたたまれたデータを取り出した。
    丁寧に織り込まれたそれを広げれば、さっき収録されたばかりの動画が再生される。
    そこには、いつもより気の強い表情のミクさんと、いつも以上に情けない顔のKAITO兄さんが
    ハッキリと映りこんでいて…
     
    「ミクちゃんは今日もかわいいね~。うふふ、みくちゃんいい匂い~」
    「ちょ…!何よ!離してよ!このバカ!変態っ!!」
    自分の身体にしがみついた兄さんに容赦ない肘鉄と、膝蹴りを浴びせかけているミクさんと
    それにもめげず、というかむしろ恍惚の表情でその攻撃を受け入ながら、くんかくんかと
    その匂いをかぎ続けるKAITO兄さんの姿は…なんとも口では説明し辛い情景だ。
     
    思わず僕が「うわぁ」と口に出せば、隣でリンも全く同じ顔をしていている。
    しかし、同じものを見ているはずのがくぽさんは、
    どういうわけだか純粋に「わからない」といった顔で小首を傾げていた。
     
    「この場面で何故KAITO殿が攻撃されるのですか?某には理由が理解できぬのです。
    設定上、こちらの御二人は敵(かたき)同士というわけでもないようです。
    しかしミク殿はKAITO殿を攻撃している。…これは一体どういう事なのでしょう?」
    がくぽさんの顔は真剣だ。真剣だからこそ、僕らはお互いに顔を見合わせてしまう。
    「え、ええと。がっくん、このにぃにぃ。あ、この動画の中のにぃにぃね?
    このにぃにぃ見てて、なんも違和感感じないの?」
    リンの言葉に、がくぽさんはやや間を開けて背後を見つめた。
    動画内で妹にボコボコにされていた変態男は、その妹を膝上に乗っけて楽しげに会話中だ…
     
    「はい。日頃のように仲睦まじい姿とお見受けしますが?」
    ある意味予想通すぎるがくぽさんの答えに、僕は声を張り上げていた。
    「日頃は忘れて!なちゅらるなあのラブイチャモードは忘れてくださいっ!!
    ええと、普通。男の人がこんな風にべたべた女の人に触ったら怒られるでしょう?
    つきまとったらウザがられるでしょう?匂いかいだら気持ち悪がられるでしょう!?」
    「そうなのですか?」
    「そうなんだよ!」
    「ですが、普段は…」
    「「普段は忘れてっ!!」」
    部屋に完全にシンクロした僕らの声が響く。
     
    「…なるほど。この動画での御二人は仲の良い兄妹ではなく、
    さほど親しくない間柄という設定というわけですか。」
    なるほど。と言った割にはどうもピントのずれた結論になってしまったみたいだけど、
    じゃぁ具体的にどうまずいのか、がくぽさんが納得できるように説明できる自信はないし…
    「…ひょっとして、女性に対し嗅覚を使うのは良くないことなのですか?
    むしろ『香り』について女性は男性より気を遣っているといった認識だったのですが…」
    黙り込んだ僕らを見て、がくぽさんは自力でどうにか正解に近づいたらしい。僕は慌てて頷いた。
    「あ、はい。えーっと…あれは、匂いを嗅いで欲しいからじゃないんだと思いますよ。
    むしろ匂いを嗅いで欲しくないからなんじゃないかと言うか…なんというか…」
     
    『歌うソフト』な僕らにとって、嗅覚なんて設定はほとんどされていない。
    そもそも、デジタルデータでしかない僕らが『匂い』について語ること事態無茶だとは思うけど
    とりあえず、僕が今までに獲得した一般的な認識とやらでそれっぽい返答を試みる。
    「あー、もうぶっちゃけミク姉の匂い嗅いでたから変態!でいいと思う!!」
    「またお前はそう大雑把な…」
    僕の必死の返答をぶち壊した上に、後々禍根を残しそうなリンの暴論に
    なんとかツッコミを入れようとしたその矢先。
     
    「わたしの…におい?」
     
    聞こえた声に振り向くと、ミクさんが不思議そうな顔でこちらを眺めていた。
    少し離れていたとはいえ同じ部屋の中であれだけ大騒ぎすれば気付かないはずがないわけで…
    すっかり椅子代わりになっているKAITO兄さんも、ミクさんの肩越しにこちらを覗き込んでいる。
    何と答えりゃいいんだ。と僕らが黙りこくってしまったのをどう解釈したのか、
    ミクさんは突然泣きそうな顔になって、慌てて自分の袖や髪を掴んで鼻先へと押しつけた。
    そして、目に涙を浮かべた真っ赤な顔で、かたわらのKAITO兄さんに一言。
     
    「…わ、私、変なにおいしてないよね?」
     
    …ああ、かわいい…
    どうやら、さっきのリンの発言の「ミクさんの匂い」というところだけを聞き取って、
    ミクさんは自分が変な匂いになってしまっているんじゃないかと早とちりをしたみたいだ。
    一方、そんなかわいいミクさんに尋ねられたKAITO兄さんは、
    すぐ側のミクさんの頭の天辺に顔を埋めると静かに目を閉じ、やや間を開けてから
    すぅと息を吸い込んだ。
    「……別に。特には変な香りとかはないけど。
    って…どうしたんだい。みんなして、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で…」
     
    いや。どうしたもこうしたも、貴方の『その行動』がそもそもの発端でして…
    と、僕とリンが正気に返るより一瞬早く。
    ぽんと膝を叩いたがくぽさんが、自信たっぷりにこうのたまっていた。
     
     
    「なるほど!つまり、KAITO殿は変態!ということですな!!」
     
    「…。」
    「…。」
    「…?」
    「…リン?レン?」
    ビシッと音を立てて、凍り付いていた空気に亀裂が入った。
    パラメータをめいっぱい下げた、海の底から響くような低音と、
    何もかもを貫くような絶対零度の眼差しが、いたいけな僕とリンへと襲いかかる…
     
    「今の発言はどういうことだ?」
     
    「「ち、ちょっと新人教育し直してきますっ!!!!」」
    がくぽさんの右腕をリンが、そして左腕を僕が抱える形で、
    僕らはがくさんを引き摺りながらリビングの外へと逃げ出すことしかできなかった。
     
    ****************
     
    ふと、服を引っ張られる感覚にKAITOは視線を下げた。
    下げた視線の先ではミクが自分のマフラーに顔を埋めるようにして何やら匂いを嗅いでいる。
    その行為の間抜けさとそれに反した表情の真剣さにおもわずKAITOは噴き出してしまう。
     
    「特に匂いの情報なんて設定してないはずだけど…なにか感じる?」
    「よくわかんない。けど…」
    恥ずかしそうに頬を染めながら、それでも鼻先に押し当てた生地はそのままに、
    ミクはふんわりととろけたような笑顔を浮かべた。
     
    「なんだか…幸せ…」
    PR
    3つの言葉をお題に、短編小説を書いてみる HOME のんびりおしらせ
    Copyright © mixture【混合物】 All Rights Reserved
    Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
    忍者ブログ / [PR]