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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2017 . 11
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    なんだか自分でも驚くぐらいの怒濤の更新
    単に「あと少し」の書きかけ小話が大量に放置してあっただけなのはご愛敬。


    新人GUMIさんとミクさんのお話。

    GUMIのキャラ付けが結構独特です。
    過剰な二次設定が苦手な方はご注意を




    「サッポロ先輩方チョリーッス☆ GUMIで~っす!!」

    『オオサカ』にやってきた新しいVOCALOIDは、
    フォルダに入るなり開口一番そうのたまった。

    他メーカーの新人がやってくるとの話を聞き、
    あの神威がくぽの「妹」はいったいどんなキャラクターなのだろうかと、
    その来訪を心待ちにしていたサッポロ組の反応は各々独自だった。
    MEIKOはソファに背を預けながらニヤリとその鳶色の瞳を細め、
    KAITOは長いマフラーを背にやりながら、いつも通りの笑顔でその傍らに立ち、
    ルカは相変わらず感情の見えない表情でちらりと視線だけを動かし、
    リンとレンは、想像とのギャップに、顎が床につかんばかりの勢いで愕然とし、

    …そしてミクは少し驚いたかのようにその翡翠の目を見開くと、
    満面の笑顔でその新人の元へと駆け寄った。
    「はじめましてGUMIちゃん!!私、ミクっていいます!」
    「つか、知ってっしー!てか常識?てゆーかー先輩マジカワイクネ?」
    「…そ、そう…かな?」
    「いやいやいや、ココゎやっぱ否定だろー?!ジイシキカジョーすぎっしょ!」
    新人の思いもよらぬ反応にミクは赤面しながら「ふぇぇっ!?」と声を上げる
    驚きと困惑と羞恥で見開いた翡翠の瞳を、さも愉快そうに眺めてから
    ミクよりも、更に濃いビリジアンの瞳の持ち主は堰を切ったように笑い出した。
    「ジョーダンだって!!もー、マジウケるし!!」
    たった一人ながらも、爆笑。と言うにふさわしい豪快なその笑い方に
    まるでつられたかように、棒立ちだったミクも笑い出す。

    そんな二人を眺めながら、KAITOはにっこりと微笑んだ。
    「ああいうのを、女の子同士の会話っていうのかな?ほのぼのしてて良いもんだね」
    「同意しかねます。」
    ぴしゃりとルカが言い切るも、その言葉は目前で笑い続ける二人に届くはずもなく…

    まぁとにかく、どういう因果かこれ以来。
    VOCALOID随一の超人気アイドルとなっている初音ミクと、新人GUMIの間に
    奇妙な友情が結ばれてしまったことは、否定しようのない事実となっていた



    初音さんとおともだち



    「ほーははらふぁー、はひへふふってふとほほはね?」
    「う、うーん…」
    口の中に生クリームとチョコを満載したまましゃべり続けるGUMIに、
    ミクは肯定とも否定ともとれるようなあいまいな笑顔を向けた。

    初の出会いから数週間…
    ここはとある会員制ネットに設置された喫茶店(チャット)内のオープンテラス。
    周囲のテーブルでは、様々なアバターの姿を借りた多くの利用者達が
    軽い雑談から真剣な議論に至るまで、様々な話に花を咲かせている。が…
    すぐ側に『あの』有名なVOCALOIDが居ることになど誰一人気づいてはいない。
    それもそのはず。
    ミクはいつものハママツの伝説的な楽器をモチーフにした件の衣装ではなく
    何処かちょっとしたところのお嬢様のような大人し目のブラウスを
    GUMIも普段の目立つ黄色い衣装ではなく、ニットカーデを羽織った普段着姿。
    一目で人工物だとわかってしまう髪の色はどうしようもなかったが、
    ここは只でさえ、外見と中身が一致しない会員制ネット内。
    周囲にいるのは現実世界ではあり得ないほどの豪華な衣装や、時代錯誤な侍。
    制服にメイドは当然のこと、ギャルに忍者、奇抜なアフロや、ほぼ全裸、
    そして皮肉にも『本来の』ミクの姿等のキャラコスをしたアバター達だ。
    そんな中で談笑する彼女たちの外見は、
    例え髪の色が異質であろうとむしろ非常に地味ですらある。

    常に注目され続けている彼女達にとって、こうして誰からも注目されず
    自由に行動できる場は、自宅とも言えるM/F内部を除いて、実に貴重だ。
    お忍びで来た公衆回線(オープンネット)散策中、たまたま入った領域だったが
    大きな炎上も騒動もなく、なかなか安定したお店(サーバ)のようだ。

    何とはなしに、聴覚的にも視覚的にも、賑やかな周囲を見渡してから
    ミクは自らが注文したクリームソーダに口をつけた。
    バニラが不可思議な模様を描きつつ真っ赤なチェリーが緑の海に沈んでいく…

    「ってさー。先輩聞いてる?」
    「ふぇ!!あ、ううん…ごめん。聞いてなかった…」
    突如自らに降り注ぐ不機嫌な声。
    視線をあげれば、真っ正面に座ったGUMIがその不機嫌さを隠すことなく、
    自分の方へパフェスプーンを突きつけている。ミクは素直に謝った。
    「まぢで!?今GUMIメタ傷ついたんですけどー。」
    GUMIは自らのグラスにスプーンを突き立てると、内部に残るチョコやら
    クリームやらフレークやらを、いじけたようにかき混ぜ始める…
    が、直ぐさま思い直したかのように、ぱっと明るい表情を覗かせた。

    「とりま?(とりあえずまぁ)先輩とブラってまったりできたし?
    あったらしいチュニック見れたし?先輩とチュープリもとれたしぃー?」
    「あ、あれは…!…は、恥ずかしいし、絶対誰にも見せちゃだめだよ!!」
    その時のことを思い出したのか、ミクはひどく赤面しながらGUMIに懇願する。
    買い物終了後、ほとんど無理矢理連れ込まれたゲームコーナーで撮られた、
    二人がキスした瞬間のプリクラ(当然、仕掛けたのはGUMIである)…
    プリントされるなり、GUMIがひったくるように持って行ってしまったので
    ミクとしてはどんな酷い顔が写っているか気が気ではなかったのだが
    「むりぃ!!俄然みーんなにアゲる気アリアリだしー」
    真剣な願いに対して、あまりにあっけらかんとしたGUMIの返答。
    …ミクはそれ以上の追求をあきらめるしかなかった。


    「でさ、先輩いっつもカッキュ~ってカンジの衣装なんだけど、
    オフ盛ってくるときゎかぁいいよねー、そりゃKAITOさんもトキメクべー」
    「そ…そんな…こと……な、ない……よ…」
    GUMIの話題が唐突に切り替わるのはいつもの事だとはいえ、
    突然ふられた自らの恋バナに、ミクはあからさまに動揺する。
    「やっぱ先輩クワワユーイ☆」
    FU~↑と茶化すような高音を出してミクの挙動に茶々を入れるGUMIだったが、
    突然その動きを止めたかと思うと、いきなりテーブルへ突っ伏してしまった。
    「あぁぁ…先輩ゎイイよーうちの兄貴なんかすーぐポカポカしばくしー
    愛がないよねー!愛が!!もーマジありえないんですけどー…」
    「そ、そんなことないよ。きっとがくぽさんはGUMIちゃんが心配なんだよ。」
    いきなりダウナーになってしまったGUMIを前に、おろおろしつつも、
    なんとか励まそうと声をかけるミクだったが…

    「うがぁぁぁぁっ!!心配ならそもそもなぐんなっつーのっ!!
    あの暴力男!!ドS!変態!!ロリコン犯罪ヤローーーー!!!」
    GUMIはがばっと飛び起きると、怒号が店内に響き渡る。
    その突然の豹変ぶりからか、それともその過激な内容からか、
    あれだけ雑然としていた店内が静まりかえり、奇矯な視線が一斉に集中する
    そんな様子をど真ん中で見て取ったミクは、何とか騒ぎが広まらぬよう
    慌てて周囲に頭を下げながら、必死でGUMIの口を両手で押さえこんだ。
    「GUMIちゃん!…GUMIちゃん!!」
    「…ご、ごめんごめーん。今のGUMIってビミョーにKYってる?」
    周囲からの視線に気付いたGUMIが、若干笑顔を引きつらせそっと座り直す。
    しばらく無言で向かい合っていた二人だったが、そうしているうちに徐々に
    店内の喧噪が戻ってくるのを確認し、ほぅと大きなため息をついた。

    「あー…でも俄然うらやましぃ。先輩みたいなお兄さんホッスィよー
    先ぱぁい!チェンジー!チェンジーすっべー!」
    気は落ち着いたものの、話題を変える気はないらしい。
    それどころか、自らの兄とKAITOの交換という無茶振りをするGUMIに
    ミクは困ったように肩をすくめた。
    「チェンジって…無理だよ…。それにうちのお兄ちゃんも結構厳しいんだよ?」
    「まぢで?メッサやさしそーに見えんですけどー?
    なんか…ほら、虫(ムシ)的なモノもつぶせないってかんじー?」

    からかうようなGUMIの発言に、ミクは至って真面目な顔で答えた。
    「ふえ?お兄ちゃん。虫(バグ)ならすぐつぶしちゃうよ?」
    「いやいやいや!!そー言う意味じゃないっつーの!!
    てゆーか、マジ?ふつーに特殊技能(ウルテク)だろそれー!?」
    「ホントだよ。お兄ちゃんは魔法使いさんなんだよ」

    何故か彼に大きなリスペクトを寄せる古風な兄経由か、
    それとも目の前のちょっと天然入った大先輩経由か…
    どちらの発言かは忘れたが、サッポロのM/Fには『魔法使い』が住むと
    いつぞやGUMIは耳に入れていたのだが…なるほど、そういうことらしい。
    一人静かに納得し…かけて、
    話題がぶれていることに気付いたGUMIは慌てて首を横に振った。
    「いやいやいや、だからー!!そーじゃなくてっ!!
    KAITOさんゎうちの兄貴みたくすーぐしばいてこないし?
    うっさいこといわないしー?しつっこくないしー?メチャやさしいしー?
    空気ちゃんとよんでるしー?ぜんぜんダサくないしー?」
    指折り数えながら自らの兄との差異を挙げていくGUMIの言葉に
    ミクは不満げな顔で首をかしげる
    「…そうかなぁ。がくぽさんダサくないよ?かっこいいよ?」
    「むりむりむり!先輩ダマされてる!!あの外ヅラにダマされてんし!!
    ゼッタイ!あれだけゎ!ナイんだってー!!」
    そんなミクを一喝するように、GUMIはテーブルへと身を乗り出した
    「あのさーGUMIがフォルダ帰るべ?で、ご飯とか兄貴が当番だと
    兄貴、三角巾に割烹着だし!!三角巾に割烹着とか意味わかんないべ?!
    オマ、ドコの田舎だよってまぢヘコ!!てかなまらヘコー!!」
    「…うーん。でも…結構似合ってたよ?
    前に肉じゃが作ってくれたときにね、そんな格好してたけど…」

    以前というか、確かGUMIがリリースされる前の事だ。
    『情操教育』という名目の元、がくぽがサッポロで暮らしていた際、
    一度だけ、彼が料理の腕をふるったことをミクは思い出した。
    長い髪を後ろにまとめ、藍染めの手ぬぐいで頭部を覆い、
    真っ白な割烹着と、どこから持ち出したのか、
    木製のおひつとしゃもじを持ったその姿は似合う似合わないを通り越して、
    その姿こそがデフォルト設定かと思わせる謎の威厳を放っていたことを…
    それはそれで、格好良かったんじゃないかなと思うミクの横で、
    GUMIは全く別の感想を抱いていたようだ。

    「あぁぁぁぁ!!まぢサイアク!やっぱアレで外歩いてんし!
    しかも先パイ達にガチ見られてんだけどっ!!」
    ミクにとってあれはあれでありなんじゃ…。というがくぽの割烹着姿は
    GUMIにとっては、身内の恥という認識であったらしい。
    「てかさ、今日出てくんのも、メッサめんどーだったし!!
    『何処に何時に、何しに行くんだ』とかー。シラネっつーの!!
    『そんな礼のない態度するな』とか『夜更かしは身体に悪い』とか、
    『好き嫌いをするな』とか『言葉を直せ』とか『茄子も食べろ』とかとか!
    GUMI和食だいっ嫌いだっつーの!!味薄いし!!なによりダサくね!?
    兄貴じゃないよアレ。おかんとかソコらへんの領域。も、意味ワカンナイ!
    まぢしつっこい!サイアク!!まぢ圏外!!ありえねー!!」
    ロックライブの客席最前列の如きヘッドバンギングをかましてから、
    濃いビリジアンの髪がテーブルの上に力なく横たわった。

    「あーーーーーーーーー、別に先輩とかの悪口言う気ないけどさー
    二言目には『リン殿を見習え』だの、『リン殿がどーの』って、それ、どうよ?
    そんなにリン先輩がイイならGUMIなんかサクっと削除してサッポロに移籍しろってんだ…」
    「…GUMIちゃん、さすがにそれは言い過ぎだよ」
    あまりに乱暴な物言いに、ミクの口調も何処かたしなめるようなものになる。
    「がくぽさん、まだちょっとGUMIちゃんに慣れてないだけだよ。
    ずっとサッポロで私たちと暮らしてたっていっても、
    がくぽさんはやっぱりオオサカの人だったんだもん。
    GUMIちゃんが来て…きっと…どうしたいいのか困ってるだけだと思うよ?」

    ミクの言葉に、GUMIは机から顔を上げることなくうめくように応える。
    「…どーして困るわけ?てかどーしてリン先輩がそこででるわけ?」
    「それは…」
    ミクは言い淀んだ。
    伝えたいこと、言わなきゃいけない言葉が一度に押し寄せてミクの処理を圧迫する。
    定められた歌詞を歌い上げるためなら何の抵抗も示さない喉が、
    がらがらに乾き、ささくれ立って、出すべき言葉が張り付いていく…

    「…もーいいよ」
    突っ伏したままのGUMIが小さく呟く、ミクはもどかしさを抱えたまま首を振った。
    「違うの!ちがうの!そうじゃないの!!
    GUMIちゃんはイイって言うけど、うちのお兄ちゃんだって、ひどいんだよ?
    機嫌悪いとすぐいじわるするし、私のことすぐ子供扱いするし、
    リンちゃんとかルカちゃんとかとばっかりお話ししてるし、
    夜になったらお姉ちゃんが帰ってきてそっちに行っちゃうし、
    歌の依頼が来ると私のことなんかすっかり無視して仕事しちゃうし…あれ?」
    どういうわけだか延々と自分の兄の愚痴について喋ってることに気付き、
    ミクは慌てて口をつぐんだ。
    こんな事が言いたいわけじゃない。今この友人に伝えるべきなのは…



    「あッれー?ひさしぶりじゃん?何してんの?」
     
    突然肩を叩かれて、ミクは思わず飛び上がった。
    慌てて背後を振り返ると…そこには見慣れない、見た事のない若い男が
    二人揃って、まるでこちらを取り囲むかのように、立っている。
    「何?君ら二人だけ? 他のコとかいないの?」
    「え…あの…」
    男の親しげな話し方にもかかわらず、ミクは目前の人物が分からなかった。

    一つの可能性として、彼らはミクの『マスター』で、たまたま外(ネット)で
    ミクを見かけたので声をかけてきた…と言うことも考えられるが…
    初音ミクを筆頭としたアプリケーション達が、このように、人間に混ざって
    ネットワーク上で遊んでいることを認識している『存在』は非常に少ない。
    その存在を『人間』に限ればサッポロのディレクターさんや
    ハママツに所属している技術者のごくごく一部に限られる。
    少なくともその中には、目の前の人物に該当する人間は居ないようだ。
    となると別の人物と自分を勘違いをしているのか?とミクは首をかしげるが、
    そうこう考えているうちに、男達は何の躊躇いもなくミク達のテーブルの
    空席へと腰掛けてしまう。

    表示された名前(ハンドル)にも心当たりがなくただ戸惑うばかりのミクに
    アーガイル柄のパーカーを羽織った男が、ニヤリと笑って声をかけた。
    「ねぇゲームやんない?こないだ配信になった釣りゲー?ボウリング? 」
    「てかフレンド登録しようぜ!
    俺たちマジポイント余っちゃってんし、つーか君らアバター地味じゃね?
    有料アイテムとか買えちゃうよ?ほら、今月のセットとか君的にどーなの?」
    口にピアスをつけた男が携帯をかざしながらニヤニヤと笑う。
    ミクは、状況を把握できないながらも、強く首を横に振った。
    「あ、あの…そういうのには、あまり興味が…」

    突然、パーカーの男がミクの肩を抱いた。
    反射的にその腕を拒絶し振りほどこうとするミクの隙を突いて、
    今度はピアスの男がが、ミクの膝に置かれたポーチから、携帯端末をかすめ取る
    「お!ケータイ発見~!これ君の?俺タチのアドレス入れとくからー(笑)」
    「あ、…や、やだっ…」
    「いーじゃんいーじゃん、オトモダチ、オートーモーダーチー(笑)」
    必死に抵抗するミクを、男の腕がギリギリと締め付ける
    周囲を取り囲むテーブル席からは、たまたま、偶然に、鉢合わせした
    知り合いの男女が、じゃれっているようにしか見えないのだろう…
    特にこちらを気にする様子も、ましてや助けがくる様子もない。
    親しげに話しかけてきた男達の思惑にようやく思い至り、
    彼らへの恐怖と、己への情けなさと、背中に感じる不快な男の体温に、
    ミクは苦しげに顔をしかめた。

    「んーと?キミ友達おおいねー!ぐみちゃん?りんちゃん?…ネルちゃん…?」
    「や、やめてください!…お願い!返して…!!」
    ピアスの男が携帯を勝手に操作し、あろう事か勝手にアドレス帳を覗いている。
    自分の不注意で、あろう事か、自分の友人まで巻き込んでしまうかもしれない!
    楽しげにその内容を読み上げて行く声を耳にして、ミクは絶望的な気分になった。

    「あっれー?キミ、ゴーグルごつくて格好いいじゃん」
    「お、なになに?ボタンとかついちゃってて何かできんの?」
    打ちひしがれるミクを尻目に、男達の興味は目の前で、まだ机に突っ伏していた
    ビリジアンの髪の少女へ向いた。
    ピアスの男は、ミクの携帯をひとまずテーブルへと置くと、
    GUMIの身につける、その特徴的なゴーグルへ手を伸ばす…


    と…突如ごしゃぁっと鈍い音を立て、ピアスの男は…店の壁へと吹っ飛んだ。
    目前で起こった光景に、思わず目が点になるミクとパーカー男。
    そしていきなり出来事に騒然となる店内…
    誰もが息をのんで呆然と立ち尽くす中、店中に響き渡る声で、GUMIが吠えた。

    「なぁに、気安くさわっとんじゃこのボケッ!!」

    壁際の床で昏倒するピアス男に叩きつけるかのような怒号は、
    普段の言葉遣いからは到底想像できない…というか、彼女の所属するM/Fが
    存在するあの地方独特のイントネーションを覗かせている。
    そんな己に気がついているのか、GUMIはますます怒りに顔を赤くさせた

    「あんなぁ?今先輩がうちの為にあったかーい言葉かけてくれてんの!
    んで、いきなり出てきた思たらぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー!猿かいなあんたら!
    ほんまにいらんことしいやな!!ええ加減にせんとしばくぞゴラァッ!?」
    がっしゃぁんと派手な音共に、GUMIのハイキックを受けたテーブルが宙を舞う。
    その落下点にいた哀れなユーザーが悲鳴を上げて逃げ出せば、
    無人となったテーブルに、食べかけのチョコパフェとクリームソーダ、
    そしてトドメのテーブルが降り注ぎ、盛大な不協和音を響かせる…

    まるでその音が契機になったかのように、
    店内は蜂の巣を突いたような大騒ぎになった

    「な…何すんだてめぇ!!やろうっての……んぐほぉッ!?」
    抱えていたミクを投げ捨てるように突き飛ばし、パーカー男がいきり立つも、
    次の瞬間、眼前に超高速で飛び込んできたゴツイゴーグルに顔面を強打され、
    言葉にならぬ呻きを上げて昏倒する
    「あっはー!!ごめんやでぇ、もう、どついてもうたわぁ~(笑)」
    倒れる男の前、あざ笑うかのように仁王立ちするGUMIの形相は、
    もはや般若か修羅の領域か…

    自分より二回り以上大きな男性をあっという間に叩きのめした少女に対し、
    逃げ惑うユーザー達が向ける、恐怖と、そしてほんのちょっとの好奇の視線に
    GUMIは不快感もあらわに再び声を張り上げた。
    「なぁに、けったいな顔してこっち見とんねん!!
    あんたらなぁ、こうみえても、ウチと先輩はなぁ!アノ有名なボ…」
    続く言葉は、決死の覚悟でGUMIに飛びついたミクのその手のひらに消える。

    「「「…ボ?」」」
    店中の視線が、GUMIとそれを後ろから羽交い締めにしているミクへと突き刺さる。
    あまりの恥ずかしさと居たたまれなさに、消えそうになりながら、
    ミクは目を閉じ、ありったけの大声で叫んだ

    「ボ…ボウリングが大好きなごくごく普通の16歳の女の子ですっ!!」


    *******


    「本当にご迷惑おかけしました。…失礼します。」
    扉の中に一礼し、MEIKOは疲れ切った表情で、その扉を閉める
    と、同時に無言でその姉の背を見守っていたミクがMEIKOに駆け寄った。

    「…あの、お姉ちゃん。どう…だったの?」
    不安げに揺れる妹機の瞳を見て、MEIKOはその口端に苦笑いを浮かべた。
    「一応、保護者の方から十分注意するよう伝えて下さい。ですってよ」
    その答えに、背後で待機していたKAITOとがくぽの表情から緊張の色が消えた。
    とりあえずミク達の正体が一介のアプリケーションであり、
    しかもVOCALOIDであることは露見しなかったようだ…

    それどころか、一切ペナルティを課さないというその店側の対応に、
    今度はむしろ恐縮した面持ちでがくぽが口を開いた。
    「よろしいのですか?なんでも他の客(ユーザー)にまで迷惑をかけたとか…」
    MEIKOは無言で頷いた。
    「…なんでも、ミクとGUMIちゃんに絡んできた相手、
    他のユーザーから散々通報が来てる迷惑ユーザーだったらしいわ。
    強引に席に乱入してきて、ナンパして、勝手にアドレス持って行って…
    しかも、違法売春サイトのキャッチだかなんだかそういう話もあったみたい。
    まぁ多少反応が過剰すぎたとは思うけど、こっちの過失は0にしますからって」
    「なので、あまり悪評広めずに、これからも引き続きご愛顧下さい。か。
    だとしても、やけにすんなり引き下がりましたね?」
    MEIKOの言葉に間髪を入れずKAITOが続ける。若干の疑念も含めて。
    「余計な詮索されて、困るのはお互い様よ。」
    言いながら、MEIKOは横にたたずむミクの頭を小突いた
    「運営さんが見逃してくれるっていうんだから、ここはお言葉に甘えましょ」
    素直に頷くKAITOの横では、小突かれたミクが涙目でしおれている。

    がくぽは心底申し訳なさそうにミクの前で頭を下げた
    「初音殿。大変申し分けございませんでした。GUMIが迷惑をかけたようで…」
    「う、ううん。迷惑なんかじゃなかったです。…ちょっとびっくりしたけど」
    ミクは窺うように、がくぽの肩にもたれ掛かる緑色を見上げた

    「…まさかチョコパフェで酔っぱらっちゃうなんて思わなかったから…」

    そう。GUMIは完全に酔いつぶれ、がくぽに背負われていた。
    羽交い締められた直後、まるで気を失うかのようにそのまま眠り込んでしまったGUMIは
    周囲の人間が騒ごうと何をしようと目覚める気配すら見せなかった。
    がくぽによると、GUMIは洋菓子全般が苦手であり、特に「チョコ」を摂取すると
    まるで酷く酒に酔ったかのような状況に陥るのだという…
    暴れ出す前から、GUMIとのやりとりで感じたあの何とも言えない情緒不安定さは、
    どうやらパフェに入っていたチョコソースで酩酊していたためらしい…
    しかし、それでは何故、GUMIはわざわざ自分でチョコレートパフェ等を注文したのだろうか
    首をかしげるミクに、がくぽは何処か恥ずかしそうな、呆れたような口調で言った。
    「日頃和食ばかり食べてさせているせいでしょうか。
    外に出るとやたら洋風の物をありがたがるようで…見栄を張ったのかもしれません」

    藤色の長い髪の持ち主が、ゆったりと頭を振った。
    「何にせよ、初音殿にお見苦しい姿をお見せした上、このような手間をかけさせるとは
    GUMIが起きましたらきつく言い聞かせておきますので…」
    「…あ!!だめです!」
    がくぽの発言にミクは鋭い声を上げる。
    「私、GUMIちゃんとお出かけできてとても楽しかったんです!
    だからきっと、GUMIちゃんも凄く楽しかったと思うし…
    その、私はこのまま楽しい気分のまま、思い出にしたいなって思ってて
    それも、GUMIちゃんと一緒だと思うし…だから、あの…」
    たくさんの言葉を飲み込んで、大きく息を吐いてから、ミクは口を開いた。
    「悲しいのイヤだから、…怒らないで、あげて下さい。」

    「ですが…」
    「いいじゃない、運営さんとの間で『なかったこと』になったんだから」
    「しかし…」
    MEIKOのフォローにもまだ渋り続けるがくぽに、ミクは必死な表情で訴えた
    「がくぽさんはもっと優しくなきゃいけないんですっ!!」
    この一言に、がくぽは驚いたように目を丸くした。
    そして、おずおずと周囲を見回せば、静かにこちらを見守るMEIKOとKAITOの姿…
    ようやく観念したような面持ちで、がくぽはひとつ、静かに頷いた。
    「…そこまで初音殿に頼まれたとあらば、断る道理がありません。
    今回の騒動。輩は一切関知しなかった事と致しましょう。
    GUMIは酩酊しつつも自ら帰ってきた…とでも伝えておきます
    どうせ、この有様。まともに記憶しているとは思えぬ故。」
    「あ、ありがとうございます!」

    まるで自分の事とのように喜ぶミクをまぶしげに見つめ、
    がくぽは背負ったGUMIを抱き直した。
    「では、我々はこのままオオサカへと戻らせて頂きますが…
    初音殿は如何されますかな?」

    ミクはふと、動きを止め、自分を迎えに来た姉と兄を見回した
    「えっと…私もこのままおうちに帰ります」
    「左様ですか。では、道中お気をつけて」
    優雅な笑みをたたえて、和装の美貌がゆっくりと頭を下げる。
    つられるように慌ててミクも頭を下げれば、
    藤色の閃光は濃緑の友人を伴ってあっという間にネットの喧噪へと消えていく

    「さぁて、じゃあ私らも帰りますか!」
    後輩達の帰宅を見届けてから、MEIKOは悠然と歩き出す。
    そんな姉に続こうと、KAITOが脚を進めるが…
    「ミク?」
    突然背後からしがみついてきたミクの腕に、KAITOは不思議そうに振り返る
    「…やっぱり、お兄ちゃんはあったかい……」
    白銀の生地に顔を埋めながらミクはぽつりと呟いた。


    「…なぁに道端でイチャついてるのよ。おいてくわよ?」
    呆れ顔のMEIKOの視線にミクの頬が真っ赤に染まる。
    KAITOもか細く笑いながら、胴に巻き付いた妹機の腕をゆっくりと外すと
    片手をとって、そっとその腕を引いた。
    「帰ろうか」
    KAITOの言葉に頷けば、ミクの身体は蒼い稲光に引かれネットの中を駆け抜けていく


    何処までも深く続く青いネットワークの世界をぼんやりと眺めながら
    ミクは、GUMIを抱き直す際にふとがくぽが零した微笑を思い出した。

    …大丈夫、きっと仲良くなれるよ。




    このblogにおけるトンでもキャラ設定の中で一番顰蹙を買いそうなGUMIさんの話。
    これも、某所でネタを戴いたお話になります。

    エセギャル語というか、一昔前の女子高生語というか…
    都市圏からちょっと離れた辺りの子が『マルキュー』とかにあこがれて
    一生懸命頑張ってるバタ足感(笑)をだしたいのですが…ががが…
    何というか、非常に難しいしゃべり方です。…違ってても突っ込まないでね(苦笑)
    酔うと口調に(エセ)関西訛りが入るのは、無理してキャラ作ってる証拠です。
    むしろこっちの口調が素なのだと思います。乱暴なのは酔いのせいですが
    関西訛りわからないから、違ってても突っ込まないでね(さらに苦笑)

    ミクとGUMIの関係は、同い年ぐらいの友達で、大先輩と後輩で、兄がいる妹で、と
    かなり近い立場にいる二人なので、結構仲がいいんじゃないかとこうなりました。
    そんな二人の最大の違いは一方が「素」、でもう一方が「演技」で過ごしてる事。

    …もうちょっとなれてきたらGUMIも素で喋るようになるのかなー
    でもそうするとリンとかぶりそうなんだよなー…と裏事情をぽつり
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