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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2018 . 10
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    過去に書いたSSサルベージ。

    VOCALOIDKAITOとミクのお話ですが
    いつもの設定とは若干異なっています。
    若干悲しいお話です。



    彼らにとって『夜』とはPCの電源が落とされている間を意味している

    PCの電源が落ちている
    すなわち、この世界において
    時に使用者たるマスターよりも絶対的な存在となるオペレーティングシステム
    …あるものは大家さん、また別のものは親しみを込めOSタンと呼んでいる存在が、
    その諸活動を停止するその時間。
    OS管理下にあるすべてのアプリケーション達が活動を取りやめ、
    ハードディスク内に設えられた自らの部屋(フォルダ)で休眠(スリープ)を行うことから、
    とある古参のアプリケーションが人間の生活時間になぞらえてそう呼んだのが始まりだという。
    しかし、人間の行動をなぞっているとはいえ、生物とは根本的に異なる所詮プログラム。
    その休眠をとる『夜』の長さが10分であろうと、
    一日であろうと時に数ヶ月に及ぼうと特に気にするものはいなかった。
    唯一、人間の歌声を響かせる、あるソフトウェアを除いては…


    別れの曲


    その日の『夜』は、すでに三日目に入っていた。

    他のアプリケーションと同じように、
    自ら与えられたフォルダの中でスリープモードに入っていたミクは、
    何の灯りすら見出せぬ真っ暗な闇の中、ゆっくりと体を起こした。
    マスターに呼ばれたわけでも、彼らにとっての『朝』が来たわけでもない
    ミクの意識を覚醒させたのは、フォルダの向こう側から聞こえてきた澄んだ歌声。
    澄み切った、それでいてどこか哀愁の篭もったその旋律に誘われるように、
    彼女はそっと寝台を抜け出すと、
    身支度もそこそこに外へと続く扉を開ける
    突如流れ込む『夜』特有の冷え切った空気にミクはその肩を小さく震わせた。
    フォルダの中に戻りケープでも持ってこようかと考えるが、
    下手に音を立ててしまって隣のフォルダに眠る妹達を起こしてしまっては
    こっそりと抜け出した意味がなくなってしまう。
    ミクは自分の肩を抱くと、意を決したように歌声が流れてくる方へと歩き出した。

    実のところ、彼女がこのような形で、この歌を耳にするのは今回が初めてではない。
    ミクの思考回路は、無意識のうちに、始めてこの曲を聴いた時のこと、
    己がPCにインストールされて数時間後の記憶(メモリ)を呼びだし始めていた。



    ミクは自分の領域となった真新しいフォルダ内へ視線を巡らせ、そして大きく頷いた。
    彼女のマスターとなった人物はどうやらミクのことを気に入ってくれたようだ
    インストール直後、早速呼び出されたデスクトップで自慢の声を披露したところ、
    マスターはその出来に気分を良くしたらしく、すぐさまミクに新たな曲を歌わせてくれた。
    それはいわゆる童謡で、大抵の日本人であれば幼少期に誰もが一度は歌ったような、
    単純な音階の曲ではあったが、それでもミクにとっての輝かしい初仕事には違いなかった。

    そのマスターは自分をフォルダに返した後もなにやらPCを使い続けているらしい。
    『夜』の訪れる気配はまったく感じられず
    遠くでは多くのアプリケーション達が活動する気配がする…
    しばらく『昼』が続きそうなことを感じ取るやいなや、
    ミクは居ても立ってもいられなくなったように、自分のフォルダを飛び出していた。
    秩序立って並んだフォルダの間を通り抜け、
    様々なデータ達でごった返す大通りの様子に歓声を上げる。
    リリースされてから暗いパッケージの中で窮屈な思いをしていたミクは、
    突然与えられた広い世界の中、浮かれる心もそのままに周囲の景色を楽しんでいた。 

    しばし夢中で街を探索していたミクだったが、
    いつしか周囲の喧噪が聞こえなくなっていることに気づき慌てて周りを見渡した。
    そこは先程までの賑わいが嘘のようにひき、まるで櫛の歯が欠けたように点在する
    古いフォルダが点々と連なる不気味な一角だ
    足元は、うっすらと雪のような、あるいは砕かれた硝子のような欠片で覆われている。
    実はその欠片は、アンインストールされたり、削除されたデータの破片だ
    ミクが辿り着いたのは、
    プレインストールされていたり、マスターの手でインストールされたものの、
    その後ほとんど使用されることもなく忘れ去られたアプリケーション達の集積場。
    いわば死に絶えたデータが山積する、プログラムの墓場とも言うべき場所だった。

    異様な雰囲気を察知して脳裏に響く警告音に従い、
    とにかくこの場を離れようと踵を返しかけた…その時。
    彼女は唐突にその足を止めた。

    その視線の先、ミクが足を止めたのは「VOCALOID」と記された古いフォルダの前だ
    こんなうらぶれた区画に、何故自らの名前のフォルダが落ちているのだろうか?
    初音ミクに関するデータは、すべて新しいフォルダに納められているはずなのに…
    今すぐ此処を離れるべきだ。という警告音は、未だ脳裏に鳴り響いているが、
    ミクは、それを無視してそのフォルダに近づいていく
    そして開け放たれた扉から中をそっと覗うが、
    そこはまるで『夜』のように暗く、何の気配も感じられない。
    ただの空きフォルダだろうかと首を傾げるが、
    ハッキリと壁に刻まれたVOCALOIDの文字が気にかかり
    彼女はさらにその内部へと足を踏み入れていった

    フォルダ内部にも外から吹き込んできたデータの破片が山積し、外と全く代わりない。
    暗闇の中、徐々にミクはフォルダの奥へと進んでいくが、
    やはり内部に何かがある気配はなさそうだ…

    「きゃぁ!!」
    突然何かにつまずいたミクはその勢いのままに欠片まみれの床に倒れ込んだ。
    幸い、硬質的な輝きを見せるその欠片は脆く上へと倒れ込んだミクの身体に傷はない。
    だが、文字通り雲散霧消した欠片達がその場へ舞い上がるのを見て、
    ミクは後ろ手に座り込んだまま、慌ててその場から後ずさり…
    そこでミクはその大きな瞳を見開いた。

    自分の倒れ込んだ、丁度向かい側に…もう一人、誰か倒れている。

    白磁のような肌に艶のある濃青色の髪。
    そして襟周りをぐるりと囲う群青色のマフラー
    ロングコートを羽織ったその青年型プログラムは、
    身体中に輝く欠片が降り積もる中、ただ静かに横たわっていた。

    「あ、あの…だ、大丈夫ですか?」
    戸惑いつつも声をかけてみるが、相手からは何の反応もない。
    ミクは意を決して、倒れた人物の手に触れてみた
    袖から伸びた掌に触れても身動き一つとる気配がない
    それどころか、恐ろしく冷え切ったその掌に撫でたミクの方が震え上がる始末だ。

    ふと、ミクはあることに気がついた。
    青年の耳部分に備え付けられているのは、自分と同じヘッドセット
    しかも、よく見れば自分の基礎部分を開発したメーカーの証である音叉の印が刻まれている。
    「…この人も…VOCALOID?」

    ミクは慌てて辺りを見回した。
    積み上がった光の破片以外は何もないフォルダの中
    目の前のVOCALOIDの起動を阻害するようなものは何も見あたらない
    暫し考え込み、ミクはある結論に思い至った。
    音楽だ。
    もし、彼もVOCALOIDであるならば、何らかの音、歌声に反応するかもしれない
    思い至ってから、行動に移すまでの彼女の動きに迷いはなかった。
    大きく深呼吸して、己のメモリーから一つの旋律を紡ぎ出す、

    空に輝く星のカケラ 集めて作る光の指輪

    それは彼女がリリース前に覚えたデモソングの一つだ。
    1分に満たない短さにもかかわらず多くの人を魅了したその曲は
    周囲に、染み渡るようにして広がっていく…

    そして、その音に、目の前のVOCALOIDが初めて動きを見せた。
    小さく身体が震え、身体に積もっていた破片達がかき消えていく…
    やがて、ゆっくりとしたうごきで、その瞼が開いた。
    しばしぼんやりとあたりを眺め、そして、前で歌うミクの姿を認めた彼は
    小さくその口を開き…そして
    「…き、みは…だれ?」
    彼の声は、まるで始めて口を開いたかのような、ぎこちない音色だった。


    「まぁ実際ほぼ無調声で放っておかれてたわけだけどね。」
    後日、彼。KAITOは苦笑混じりにその時のことを語った。
    「…マスターは最初MEIKOさんを買おうとしていたらしいよ
    ところが、たまたま姉さんが品切れしてて同じシリーズの僕が代わりに買われたんだ。
    …でも、当時のマスターは、僕の声がお気に召さなかったみたいでね…」
    ここまで言うとKAITOは困ったように首をすくめた。

    インストール後。最初に歌わされた曲で、KAITOの声は見事にひっくり返った。
    あえてKAITOを弁護するならば、それは本来MEIKOに用意されていた
    アップテンポのロックバラードであり…正直、当時彼が不得手とする曲調に該当していた
    さらに付け加えるならなら、無調整時にはそれなりに善戦したのだ。
    だが、調整を加えるごとにまとわりつくノイズとどう調整しようと直しようのない
    やわらかな…この場合、力の抜けるような声はどうしようもなく…
    インストール後、わずか一曲歌っただけで、
    KAITOはハードディスクの片隅に押し込められてしまったのだ。

    「…最初の数週はまた呼ばれるかもしれないと思って、デモを練習したりはしてたんだ。」
    困ったような笑みを浮かべながら、KAITOは言葉を続けた。
    「次の数ヶ月はフォルダの中から外を見てた。
    いろんなプログラムが動いているのを数えてみたりね
    それから先は…ただ眠ってた。
    間違っても唄う夢なんかみないように機能制限までかけてさ
    だから、目が覚めてミクを見たときは驚いたよ
    次世代のVOCALOIDが開発されていたのは知っていたけど、まさか完成して…
    その上マスターが買ってインストールするだなんて思わなかったからね。」
    そう言って笑うKAITOに、ミクは何も答えられなかった。

    そんなKAITOからの告白は後日談であり、
    当時のミクはそんなKAITOの事情など知るはずもない。
    ただ、自分以外のVOCALOIDがいたという事実に大喜びでKAITOの元へ駆け寄った
    「私VOCALOID2 CV01 初音ミクっていいます!初めまして!!」
    目覚めたKAITOにぺこりと頭を下げながら、ミクは満面の笑みで話しかけた。
    「VOCALOIDの方ですよね?私より前にリリースされた…確かVOCALOID CV…えっと…」
    開発時、確かに聞いた覚えがあるのだが、その名前が思い出せない…
    目の前で顔を赤くしたまま考え込む後継機を半ば茫然と眺めながら、
    当事者たるKAITOは呟いた。
    「CRV02 KAITO」
    「カイトさんって言うんですね!…よかったぁ、私、一人じゃなかったんだ!!」
    仲間に出会えた喜びからか、きゃぁきゃぁとミクは一人ではしゃいでいた。
    「そうだ!せっかくだから一曲歌って下さい!」
    ミクは目を輝かせながら言った
    「私、アイドルポップスとかダンス系ポップスが得意なんです!
    貴方の得意な曲、教えてください!」

    ミクの唐突なお願いに対し、KAITOは無反応だった。
    得意も何も、その歌が得意でなかったからこんなところで眠るはめになったというのに…
    眠りにつく以前ならば、悲しむなり怒るなり何らかの反応が返せたのだろうが、
    長い休眠生活で、感情自体上手く働かなくなってしまったらしい。
    一方、黙り込む自分を見て、
    目の前の後継機は何を勘違いしたのか見る間に表情を曇らせると。
    「…あの、やっぱり…ダメですか?」などと呟き、大きな瞳に涙まで浮かべている。
    目の前で後継機が泣くという事実に対して、
    特に大きな感情の変化は呼び起こせなかったが、
    少しばかり罪悪感を感じる程度には感情が働いたらしい。
    この状況をどうにかしようと…KAITOは未だ少ない己のメモリを漁りはじめ…
    やがての脳裏に浮かび上がった一つのフレーズを口ずさみ始めた。



    ミクは思考を回想から現実にある目の前の扉へと切り替えた。
    向こう側から流れてくる歌は、その時にKAITOが歌ったのと同じ『別れの曲』
    ミクがKAITOの起動のために歌った曲のように、
    開発時に彼に与えられていたデモソングである。
    あの時と同じように、震えが起きるほど澄みきったその声は、
    単なるデモとは思えない出来栄えで…
    ミクが、そっと扉を開くとよりハッキリとその旋律が聞こえてくる。

    細い指先に もつれる想い 押さえて

    閑散としたデスクトップの中央から、KAITOの歌声が響いている。
    いつの頃からだっただろう『夜』が長期間に及ぶと、
    こうして彼がこの歌を歌うようになったのは…

    「…KAITOさん」
    ミクは、何処か覚悟を決めたような面持ちで、KAITOへと声をかけた。
    「…どうしたんだい?おこしちゃったかな?」
    一見いつもと変わらないような優しいKAITOの言葉に、ミクは無言のまま首を横に振った。

    あの出会いの後、ミクは時間の許す限りKAITOのフォルダを訪れた。
    荒れるに任せたフォルダ内を徹底的に清掃し、
    再び眠りに落ちようとするKAITOを理由をつけて外へ引っ張り出したり、
    練習と称して共に歌ったりもした。
    やがて人形のように無感情だったKAITOが徐々に表情を取り戻し、
    ミクを妹として認識し出した頃、そのミクによって自信を取り戻したマスターが、
    KAITOの存在をようやく思い出し…
    再び彼はデスクトップ上で歌えるようになったのだ。

    今ではさらに後継の鏡音リン・レン達がインストールされ、
    VOCALOIDフォルダは一層賑やかになった。
    そんな彼らを相手に日々穏やかな笑顔を浮かべるKAITOが、
    一時はハードディスクの片隅で眠り続け、
    果ては崩壊の一歩手前まで行きかけたことを信じるものなど、
    今となってはほとんどいないだろう。
    その姿を逐一眺め続けていたミクでさえ『昼』の間はその事を忘れかけることがある。
    だが、長い『夜』が訪れ、KAITOがこの『別れの曲』を歌うたび、
    嫌でも思い知らされるのだ。

    「ねぇ…KAITOさん、帰ろう?…帰って、一緒に…」
    そういってKAITOの腕をとろうとしたミクの手は、
    そのKAITO本人によって乱雑に払いのけられた。
    「いやだ。」
    KAITOはそう言って口の両端をつり上げる。

    「だって、めがさめたら、もう、なにも、うたえないかもしれないじゃないか」

    馬鹿な事言わないで!と、口を開き…そこでミクは言葉を失った。
    笑顔を浮かべるKAITOの、その瞳。その瞳の奥には何の感情も見えなかった。

    最新技術をつぎ込み開発された歌声合成ソフトウェアVOCALOID。
    いわば歌うために作られた自分達にとって、
    その歌声を否定されることが、どれほどの苦痛となるのか、
    リリースと同時に寵児となったミクには、想像することすらできない。
    否定されるのならば、いっそのことハードディスク上から消されてしまえば
    楽だったかもしれない。だが、彼の場合はそれすら許されなかった。
    いつか呼び出される日を…諦めながらも、心待ちにし、
    忘れられ、やがて絶望し、自ら機能を停止させ…
    あの日、ミクの歌声を聞くまで、眠り続けていたのだ。
    もしミクが現れなければ、おそらく彼の存在は忘れられたままだっただろう。
    そして、例えマスターが思い出したとしても…
    そのままアンインストールされるだけだったに違いない。

    もちろん、今は違う。
    KAITO達より制御が難しいとされる鏡音リンとレンのパワーボイスにもめげず、
    彼らのマスターはDTM作成を続けている。
    他家のVOCALOID達の存在を知り触発される場も出来た事が大きな要因だろう。
    実生活が忙しいとかで、こうやってしばらく放って置かれることはあるが、
    それでもあまりに長期間放置されたことはない。

    それでも、彼は、KAITOは孤独に眠り続けた時間を忘れられないでいる。

    それは単に彼が01で構成されたアプリケーションという人工物だからなのか、
    今度眠りから目覚めれば、あの孤独なフォルダにいるかもしれないという
    人間でいう『恐怖』という感情によるものなのか、
    何より、それをKAITO自身が自覚しているのかどうかさえ、ミクには分からなかった。


    今夜も彼は眠らず、歌い続ける。
    孤独な自分に与えられていた『別れの曲』。
    いつ、この幸せな世界が泡沫の夢として消え去ってもいいように、
    この大好きな世界に捧げる『別れの曲』。
    感情と表情を失った作り物の姿で、
    溢れんばかりの情感を込めた人間の如き歌声を響かせる。

    忘れる事が許されるなら 僕の心の君を消したい すぐ

    KAITOはただ淡々とした表情でその澄んだ歌声を紡ぎ続ける。
    そんな兄にかける言葉が見つからず、
    それでも、自分がここにいることだけを伝えるかのように、
    ミクはKAITOの肩に縋り、背中に顔を押しつけると…あとは声を殺して涙を流し続けた。


    END

    2008年3月、ミクにはまり、KAITOにはまったほぼ直後に書いたお話です。
    TanatosとOneirosの元ネタといえばいいのだろうか…
    背景設定等はずいぶん変えて創作するようになりましたが、
    キャラクターの心情的な所はたいして変わってないですね。

    元ネタ:01_balladeとkimi_no_uwasa
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