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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2017 . 12
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    カイミク色強めのお話です。

    説明不要の名曲「カンタレラ」からインスパイヤーなお話。
    夜中のノリで描いたのでちょっと恋愛色強いです。


    Cantarella



    煌々と輝く満月が丁度南中を過ぎた頃、
    豪奢な飾りを付けた二頭立ての馬車から一人の男が下りてきた。
    すでにかなりの夜更けにもかかわらず、
    彼を迎えるべく玄関ホールへずらりと並ぶ使用人達。
    馬車を降りた男は彼らを無感情に一瞥し、その場を過ぎ去ろうとして、
    ふと、足を止めた。

    男の耳に届いたのは、屋敷の一室から溢れ出るピアノの音。
    紺色のコートの裾を翻し、男は傍らに立つ老執事へと向き直る。
    「アレはまだ起きているのか」
    「はい。
    お嬢様はカイザレ様がお帰りになるのを大変に心待ちにしているご様子でした。」
    淀みなく答える執事に、男は不愉快そうにその怜悧な瞳を向けた。
    「何か言いたげだな。」
    「いいえ。私はただ事実を述べただけにございます。」
    「なるほど、良い答えだ」
    は、と吐き捨て、男は再び立ち並ぶ使用人達を一瞥した。
    それでもただ頭を下げ微動だにしようとしない使用人達を物言いたげに見回してから、
    男は小気味のいい靴音を響かせ、彼らの前を後にした。


    背後で扉が開かれたことに最初ミクレチアは気がつかなかった。
    幼い頃から弾き続けてきたピアノ。
    かつてそれを弾くことは兄と共に音楽を奏でるためであったが、
    その兄が家督を継ぎ、多忙な毎日を送る現在では、
    彼が屋敷を留守にする間の心の支えとして
    独りで鍵盤に触れる事が多くなっていた。
    孤独な心持ちが指を伝わり、鍵盤へと零れる。
    彼女の心情をそのまま表した旋律が部屋を満たしている。
    その中でミクレチアはただ淡々と指を動かし続け、
    その姿はさながら一枚の絵画のようですらある。

    背後で絨毯を踏む靴音に気づき、ミクレチアは手を止めて振り返ろうとした。

    「止めなくていい。久々にお前の奏でる音が聞きたい」
    彼女の行動を制したのは、兄カイザレの一言だった。
    先程のホールでのやり取りとは対照的に、命令口調でありながら、
    優しさを含んだ声音が部屋の中に響く。
    「お兄様…」
    「どうした?まだ曲は終わっていないのだろう?」
    ミクレチアが振り返ると、
    カイザレは設えられた長椅子に身体を横たえ悪戯っぽく笑っていた。
    「…今宵は、もうお帰りにならないかと思っていました…」
    「何故?お前より、くだらぬご機嫌伺いにすぎぬ夜会の方を優先させるとでも?」
    カイザレは鼻で笑った。
    差し出すように傾けられたフルートグラスの中ではシャンパンの泡が弾けている。
    「三流楽師達の騒音より、お前の紡ぐ旋律の方が余程心地良い……続けるんだ。」

    ミクレチアは小さく頷き、再びピアノへ向き直った。
    最初こそ戸惑うような指使いも見られたが、
    徐々にその演奏へ、音の世界へと没入していく

    その瞬間ミクレチアは小さな悲鳴を上げた。
    いつの間にか彼女の背後に立った兄が
    その翡翠色の髪を一房掬い取り、口づけを落としたのだ。
    「続けるんだ。」
    驚いて手を止めたミクレチアの耳許でカイザレが囁く。
    口調こそ優しいが、有無を言わせぬその言葉に、
    ミクレチアは小さく震えながら指を動かす

    ゆったりと流れる旋律、
    その中に潜む不安に曇るその音色を聞き取り、カイザレは眉根を寄せた。
    「何をそんなに怯えている。」
    「お、怯えてなんか…」
    慌てて否定するミクレチアの態度に、カイザレは何かを確信したように頷いた。
    「使用人達に何か言われたな?」
    「…そんな…こと」
    言葉の上で否定はしていても、不安げに揺れる旋律が何よりも事実を表している

    カイザレは大きく息を吐くと、
    嘘をついた罰と言わんばかりに、長い髪に隠れていた耳朶をきつく噛んだ。
    突然の感覚にミクレチアは絹を裂くような悲鳴をあげて崩れ落ちた。
    鍵盤へと倒れ込もうとするその身体を難なく片腕で支えると、
    カイザレはそっと耳元に口付ける

    「嘘は許さないよ、ミクレチア………私がいない間、寂しかったかい?」
    「…はい」

    カイザレの腕の中、怯えたように震えるミクレチア
    しかしその頬は紅く染まり、兄を向ける視線は焦がれるようなものへと変わる

    「…寂しかった。ずっとお兄様に会えないで…私、寂しかったの…」

    「いい子だ、ミクレチア…愛しい愛しい、私の妹…」
    耳元で囁く兄の唇からは、濃い葡萄の香りがする
    眩暈がするような熱い香気に包まれ、ミクレチアは目を瞑った。


    惹かれあう想いは、まるでカンタレラのようにふたりを蝕む――


    ピアノの旋律は、もう、聞こえない


    終劇

    ボーカロイドSNSにゃっぽん!に上げたものの再掲。

    完全に余談ですが…
    ピアノが発明されたのは1700年代、本当のカンタレラの時代には存在せず…
    故にこの文章のイメージは19世紀イギリスヴィクトリア朝ぐらいの時代背景でやってます。
    (二頭立て馬車とか、インバネスとか、執事とか、玄関ホールとか…好きなんだよ。)
    兄さんが必要以上に黒っぽくサドッ気出しているのは仕様です。
    カイザレ様はどえすであれ!(殴
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