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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2018 . 06
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    通常運行でカイミクですが、今回はがくぽさんが不憫です。
    とりあえずがくぽファンには全力で土下座しておきます




    あなたのとりこ



    「おかえり、今日も一日お疲れ様」
    肩を落としてリビングへと帰ってきたミクに、柔らかい声がかけられた
    翡翠色の視線を向ければ、ソファの端から蒼い髪と長い脚がはみ出している。
    「ただいま…お兄ちゃん…」
    いつもよりもはるかに元気のない妹機の声に、KAITOは身体を起こした。
    「どうしたんだい?今日はがくぽ君と仕事だったよね?」
    ミクはしばし黙り込んでから、ぽつりと零すように言った。

    「あのね…がくぽさんが、歌の最中に歌詞を忘れちゃったの」

    思っても見ない返答に、KAITOは目を丸くした。
    VOCALOIDは歌うソフトウェアだ。
    PCに打ち込まれた歌詞と音程通りに歌う。それが、彼らの仕事であり存在理由だ。
    そんなVOCALOIDが「歌詞を忘れる」などという事が起こりうるはずがない。
    しかし、目の前の妹機はわざわざ嘘をついて誰かを貶めるような性格ではない
    なにより、その妹機自身もがくぽが「歌詞を忘れた」事について困惑している様子だ。

    「歌ってる最中に突然黙り込んじゃって…一度じゃないの。何度も。おなじとこなの
    マスターさんもおかしいって思って、入力した歌詞を見直したり、打ち直すんだけど
    やっぱり止まっちゃうの、でも、がくぽさん。ソレガシが未熟者だからって
    それだけしか言わないの。だから、マスターさんもすっかり困っちゃって…」
    「それは…困るだろうね…」
    ユーザーはVOCALOIDに歌を歌わせるつもりでVOCALOIDを使っているのに、
    その肝心のVOCALOIDが歌を歌えないというのだ。
    おそらく、その不幸なマスターは「後日改めて」と今日の収録を打ち切ったのだろう。

    「ねぇお兄ちゃん。がくぽさんと歌う曲、一緒に練習してくれる?」
    「別に僕は構わないけど、それで何故ミクが練習するんだい?」
    話を聞く限り、歌が歌えなくなっているのはミクではなくがくぽの方だ
    それでも自ら練習したいというミクにKAITOは首をかしげる。
    「…えと……がくぽさんが止まっちゃうところ、私が一緒にハモるとこなの
    がくぽさん優しいし、私とかリンちゃんとか、年が下なのに先輩扱いしてくれて、
    もしかしたら…私が歌えてないせいで、がくぽさん、止まっちゃうのかなって
    でも。私のこと先輩だから……庇ってくれてるのかなって…」
    ミクの言葉にKAITOはますます首をひねった。
    己の知りうる限り、神威がくぽは生真面目が衣装を着て歩いているような青年だ。
    変におべっかを使ったり、媚びへつらったりするような性格ではない。
    むしろ、大先輩相手であろうが、拙いところがあれば拙いと指摘しそうな風ではある


    「…まぁ、考えてても仕方ないか。じゃぁミク、悪いけどVSQを変換してくれないかな」
    兄妹機と呼ばれようともエンジンの異なるKAITOとミクの間に互換性はない。
    共に歌おうとするなら、新型であるミクに変換し直して貰うより他に方法がないのだ
    一部互換するパラメータはあれど、こればかりはどうしようもない。
    小さく頷いたミクが、刻まれた記憶(メモリ)から今日の「歌」のデータを呼び起こし、
    おもむろにKAITOの手を取った。その小さな手のひらにKAITOが触れた途端、
    幾つものデータが一気に彼の脳裏へと流れ込んできた
    そこには音程、歌詞、表情といった音声データどころか、曲とPVを完成させるべく
    ミク達に打ち込まれた各種の多様なデータまで含まれていた。
    拾い上げたそれらから読み解くに、曲調自体はロックやメタルの雰囲気でありつつも、
    内容はがくぽの外見を踏襲した和風、そして何処か妖しく、ダークな悲恋モノのようだ。
    PVのイメージは江戸期の花街、いわゆる遊郭がモデルらしい…

    「ねぇ大丈夫?ちゃんと読めてる?」
    流れ込んできた膨大な情報に、一瞬我を失っていたKAITOは慌てて頭を振った
    「うん。まぁ、収録するワケじゃないし。音だけ追うならこれで十分だよ」
    「よかった。じゃぁ、始めるね!」
    言うが早いか、データを処理するKAITOの胸元に、突然ミクがしな垂れかかる
    「…み、ミク?」
    「ええと…それで、がくぽさんの右手が私の腰で、左手でキセル持ってるの
    それで私が右手を…あれ?左手はがくぽさんと合わせて…右手が……」
    どうやら、ミクはただ歌うだけでなくPV撮影時の体勢を再現しようとしているらしい。
    スタジオの広い畳の上ならいざ知らず、このあまりに狭いソファの上で
    二人が並んで横になるような体勢にはかなり無理がある。
    KAITOはミクが落ちないように、必死に背もたれ側に身体をずらしてはみるが…
    どんなに藻掻こうとも、そのソファの座面が広がるわけではない。
    右手、右手と呟きながら何故かお茶碗を持つ手を彷徨わせているミクの横で
    静かに舌打ちをしたKAITOは、なにやら意を決したように、
    その細腰を己の身体の上へと抱えあげた。

    「きゃぁ!」
    「右手はお箸。左手はお茶碗。お茶碗持つ手が僕と合わせて?
    煙管はないことだし。お箸を持つ手は、空いた僕の左手と繋いでおこうか」
    「…うん」
    埒が明かない逡巡を止めさせ、KAITOがにっこりと微笑む。
    実際のPVと多少異なる体勢になっていることが不満なのか、
    しばし眉根を寄せていたミクだったが、兄の身体に跨るように乗り上げたうえ、
    両手の自由も奪われ動けない以上、不承不承、頷く事しかできない。

    「ええと…じゃぁ歌い始めだよね…」
    「歌い出しはミクだけなんだね。がくぽ君のパートはサビからみたいだから、
    僕からそこから歌えば良いのかな?」
    「うん。サビは二人一緒だよ。」
    さっと気を取り直したミクは、細やかな指示を出しながら眼下の蒼に笑顔を向ける
    ぱさりと乾いた音を立て、質量を持たないプリズムグリーンが
    二人の顔を外界から遮断するかのように垂れ下がり、硬質な碧い光が視界を埋める。
    澄み切った水の中を思わせる小さな密室で、ミクの表情が切り替わった。

    屈託のない笑顔は陰りを帯びて、澄んだ瞳は情欲に潤む。
    皆に愛される電子のアイドルから、、閨(ねや)の中での物語の主人公へ、
    歌詞が、曲調が、世界観が、音楽が、一瞬で小さなミクの身体に乗り移る。
    均一であるはずの造られた声は愁いを帯びて、擦れた声が痛々しい
    可愛らしい髪型、衣装はいつも通りのものでありながら、
    ただただ縋るように、目前の情夫に向かって愛を乞うその姿は、
    もはや「練習」の域を超えて、鬼気迫るものがある

    やがて、蜜のように甘く紡がれる音に低音が重なり、物語は佳境へ進む。
    女の細腕が艶めかしく男の輪郭をなぞり、互いの視線と吐息が至近距離でぶつかり合う
    絡み合う音、縋るように這わされた腕、そして…


    「あーそうか…」
    濃厚な旋律を唐突に断ち切ったのは気の抜けたKAITOの声だった。
    その途端、張り詰めていた濃密で危うげな空気は跡形もなくかき消え、
    元の「のどかな昼下がり」がフォルダ内を埋め尽くす
    「…なんで止めちゃうの?」
    不服そうに唇をとがらせ、ミクはKAITOを非難じみた目で見下ろした。
    一生懸命練習していた歌を何の理由もなく唐突に邪魔されたのだ
    いくら温厚なミクでも腹を立てるのは当然のこと。
    しかしそんな妹の怒りなど何処吹く風といった表情で、KAITOはぼそりと呟いた。

    「がくぽ君が歌詞を忘れるのって、ここだろう?」
    ぼんやりとした表情ながら、吐かれた言葉は確信に満ちている。
    ハッと息を呑んだミクの表情から、指摘が正しいことを見て取ったKAITOは
    …何故か心底呆れ顔で溜息をついた。

    「なるほど、そう言うことか。だから、ソレガシが未熟故…ね。」
    「ねぇ、ねぇ、どうしてここで止まっちゃうってわかったの?
    やっぱり、私の歌い方が悪かったの?そんなにおかしかった?」
    自分が知覚しない不手際があったとでも思ったのか
    ミクは不安そうな面持ちで兄に尋ねかける。KAITOは静かに首を横に振った。
    「ミクは悪くないよ。全くもって悪くない。悪いのは全部あの紫だ。
    そう言うわけで、ミク。ちょっと僕の上からどいて貰えるかな?
    僕はこれからあのむっつり侍の部屋(フォルダ)に、お説教に行かなきゃ」
    「……どういうこと?」
    小首をかしげるミクに、KAITOはしばし間を取ると
    「つまり…こういうこと」

    次の瞬間。ミクの顔が沸騰した。

    「~~~~~~~~!!!!!…お、お仕事だよっ!?
    ま、ま、ま、マスターさん、き、キスしろとか言ってないよっ!?」
    両手で唇を押さえたまま、ミクは勢いよく後方へと飛び退いていた。

    今の今まで、お互い身体を密着させ、間近で顔を眺めあう状況で
    普通の会話は勿論、危うい歌詞も平然と歌っていたというのに、
    これは仕事だという認識が、羞恥といった諸々の感覚を遮断していたらしい。
    もっとも、ユーザーの僕(しもべ)であるVOCALOIDが、
    恥ずかしい等といって、仕事を拒否していたのでは話にならない。
    なので、ミクが実際に手を出されるまで「気付かなかった。」というのは
    そのように造られているはずのVOCALOIDとしては当たり前の事だ。
    となると、問題は…

    「うん…だからお説教しに行くんだよ?」
    穏やかな声でそう言って、KAITOはソファから起き上がった。
    噴き出す殺気と、ぞっとするような微笑みを携えて…


    *****************


    「後生ですっ!後生ですから元に戻して下されっ!!」

    恥も外聞もないような有様で、神威がくぽは【彼】に縋り付いていた。
    身体を引き摺られるようにしながらも、必死にしがみつくその脚には
    オオサカがとある大物にデザインを依頼した特徴的なブーツと白い袴。
    がくぽが上を見上げれば、すらりとした長身の先に紫水晶の髪を束ねた美丈夫が、
    ソーダアイスを囓りながら、冷ややかな顔でこちらを見下ろしていた。

    「やだ」
    「そこを何とかっ!!」
    【がくぽ】の端的な拒絶の言に、床で引き摺られているがくぽが悲痛な声で叫ぶ

    「…レンレン、どしたのアレ…」
    部屋の隅で携帯ゲームを操っていた【がくぽ】に
    今部屋に入ってきたばかりの【がくぽ】が困惑したように声をかける。
    ゲームを一時中断させて【がくぽ】は気の毒そうに溜息を吐いた
    「KAITO兄さんが、がくぽさんのデータいじくって、
    誰のことも全部がくぽさんの姿に見えるようにしちゃった…らしい。」

    「某、これから恋物語を題材にした収録がっ!!」
    「知ってるよ。今度は歌詞忘れないと良いね。あぁ、でも今度は大丈夫か
    相手の顔に見惚れようにも、目前には自分の顔が大写しだからねぇ」
    「じ、自分の顔に向けて睦言をささやけと仰るのですかっ!?」
    「水鏡に映った自分自身に恋焦がれ、花になったって伝承もあるじゃない」
    「そんな無茶苦茶なっ!!」

    遠巻きに遣り取りを眺めていた、【がくぽ】が小さく呟いた。
    「中身はミクさんだとはいえ、自分相手に濡れ場撮影ってどんな拷問だよ…」
    「がっくんも面倒なひと敵にまわしちゃったもんだ」

    どこぞの未完の連載小説の如く、追いかけて許しを乞うがくぽを蹴り飛ばし、
    部屋から去っていく【がくぽ】を、倒れたがくぽが必死の形相で追いかけていく…
    徐々に遠ざかる声に心底同情しながらも、
    何もできぬまま【がくぽ】達は揃って肩をすくめた。


    めでたしめでたし…なのか?

    最後、わかりづらいですが、全員ががくぽに見えるがくぽ視点でお送りしました。(ややこしい)

    兄さんががくぽさんに対して某金色の夜叉と化してますが…普段は仲が良いはずです。
    ただ、年長組は真面目に仕事しなかった後輩には、容赦しないと思うんですよね
    しかし今回は真面目に仕事しない事にキレたのか、ミクでヨコシマな想像した事にキレたのか…
    …まぁ多分両方なんでしょうけど。←

    「仕事」であれば、キスでも濡れ場でも卑猥言葉でもどんとこーいなのに
    お仕事スイッチがOFFになった瞬間に免疫0になるミクが書きたかった。
    後悔はしていないが、がくぽファンの人ごめんなさい。
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