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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2024 . 04
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    カイミクがイチャイチャする予定のお話です。←





    初音さんとおとぎばなし


    風の冷たい、ある冬の夜のこと。
    ひとりの少女が街角でマッチを売り歩いていました。
    接ぎの当てられたぼろをまとって、靴はどこかで失くしたのか片足だけが裸足。
    よろよろと頼りない足取りで雪の上を進んでいきます。

    「マッチは要りませんか…?」
    懸命に張り上げた声は木枯らしと雑踏に掻き消されてしまいます。
    その少女。初音ミクは、かじかむ手を擦りながら、大きな家の陰に身を寄せました。
    ミクの古い前掛けにはたくさんのマッチの束が入っていました。
    数十本のマッチを乱雑に束ねただけのそれは、まだまだ多くの数が売れ残っています。

    風に舞い上がった雪に視界を遮られる中、ミクは通りかかった女性に声をかけました。
    「え……マ、マッチ……?」
    通りかかった女性、弱音ハクは困ったように眉根を寄せます。
    「あ、あのぉ……その……あの…わ、私…お給料…前で……ご、ごめん…なさい…」
    ハクは何度も何度も頭を下げると、ミクの前から逃げるように去ってしまいました。

    次いで通りかかった重音テトに、ミクは声をかけました。
    「なんでアリマスカ?…まっち?」
    テトは興味深げにマッチの束をつまみ上げます。
    「これで火がつくでアリマスカ?…エ?…こする?…オォ!!ついたでアリマス!」
    火のついたマッチを見て、テトは「UTAUの皆に見せびらかしてやる。」と
    大喜びでマッチを1束買っていきました。

    次にミクが声をかけたのは、必死にケータイをいじくっている亞北ネルでした。
    「はぁ?マッチ?…あんたね、物乞うにしてももうちょっとまともなモン有るでしょ?
    馬鹿じゃないの?こんなのにお金払う輩、このご時世いるわけ無いわ。
    いるとしたらソートーのお人好しか、あるいはあんた以上の馬鹿って事ね。
    ま、ある意味古すぎて、逆に新鮮って言うか、そんな気がしないでもないわね。
    ………え?何ぼーっとしてんのよ。いいからさっさとマッチ出しなさいよ!!
    一束ぐらいだったら買ってやらなくもないって言ってんの!!ったく、ボケてんだから!
    べ、別に物珍しいから買ってるのよ。あんたのためなんじゃないんだからね!!
    こんなのまともな神経で買うわけ無いでしょ!?ネタだっての!!!」
    そう言うと、ネルはマッチを5束。ひったくるように持って行ってしまいました。
    …マッチ5束分の代金にしては、ほんの少し多めの小銭を残して。


    さらに強い風が吹き付けて、ミクは再度建物の陰に身を寄せました。
    びゅうびゅうと唸りを上げる北風が積もった雪を吹き上げ、街をを真っ白に染めていきます。
    こんな寒い寒い夜に、街を出歩く人はもうほとんど見あたりません。
    破れた服と片方だけの靴ではとても耐えきれない寒さに
    とうとうミクはうずくまってしまいました。
    全身の震えは止めることが出来ず、裸足で歩き続けていた左足は
    あまりの冷たさにもう感覚すらありません。

    ふと、ミクはお出汁のいい香りに顔を上げました。
    今日は大みそか。いい香りの出所は、側らの建物の中のようです。
    「…つーかさ、なして今日の夕飯わー蕎麦なわけー?」
    「大晦日の夕餉(ゆうげ)と言えば、蕎麦にきまっておろう。
    昔より大晦日に食べる蕎麦は、蕎麦のように細く長く達者に暮らせという先人の…」
    「兄上ぇ、その話全部したら蕎麦延びちゃわね?さっさと食った方がいんじゃね?」
    「GUMIが話を振ったのだろうっ!!」

    建物の窓から聞こえる楽しそうな声にミクがうつむくと、
    前掛けの中のたくさんのマッチ束が音をたてました。
    …その小さな音に誘われるように、ミクはかじかむ手で、マッチを壁に擦りつけます

    シュッと勢いよく擦れた先から目が眩むほどの光があふれ…
    気づけばミクの目前で、桃色の髪の女性が優雅な微笑みをたたえていました。
    「CV01。どうなさったのですか?」
    艶やかな長髪に落ち着いたハスキーボイス。
    そこに現れていたのはミクの年長の妹、巡音ルカの姿でした。
    微笑みと共に差し出される手に、ミクが自らの手を重ねようとしたその時、
    ジジ…という鈍い音と共に、光が消え、ルカの姿もかき消えてしまいました。

    ミクは再び震え始めた小さな手を宥めるように、次のマッチを燈します。
    光が周囲を覆ったとき、目前にいたのは…黄色い髪の少年と少女でした。
    「ミク姉っ!早くミク姉もこっちに来るッスよ!!」
    「あああの!……ボ、僕とい、いっしょにキ、来てくださいっ!!」
    今度現れたのははつらつとした笑顔を見せる妹、鏡音リンと、
    何故か顔を真っ赤にしている弟、鏡音レンの姿。
    どちらもいつもの半袖のセーラー姿であるにもかかわず、
    彼らは光の中、凍えることもなく、楽しそうにミクを誘っています
    徐々に小さくなっていく光の輪に、ミクは必死に凍り付いた腕を伸ばしますが
    しかし、すぐに辺りは暗くなってしまいます。
    燃えさしのマッチを眺め、ミクはもう一本マッチを燈しました。

    「あら?なぁに泣きべそかいてるの?
    もっとシャキッとなさい…あなたはこのおねーさんの自慢の妹なんだから!」
    一際明るい光と共に、MEIKOが姿を現しました。暖かい笑顔を浮かべる姉の背後には
    今まで光の中に出てきた、リンや、レン、ルカの姿も見えます。
    暖かい部屋の中から、全員がミクに優しい言葉をかけ、腕を差し伸べてくれています。
    しかし、またしてもその姿がふわりと揺らぎ、あたり暗くなり始めたのを見て、
    ミクは慌てて、エプロンに入れたマッチの束を掴み、まとめて壁へと擦りつけました

    …しかし、マッチに火は燈りません。

    どんどん暗く、遠くなっていく姉たちの姿に、懸命に腕を伸ばしながら
    ミクは何度も何度もマッチを壁に擦りつけます。
    何本ものマッチが折れ、かじかんだミクの指がついにそれを摘むことができなくなった
    ちょうどその時でした。
    急に路地に吹き付けた一際強い寒風が、最後の炎を吹き飛ばし、
    ミクの小さな身体の上にたくさんの雪を覆い被せていったのです。

    真っ白な雪の重みに耐えながら、ミクはもがきました。
    もがいて、必死にもがいて…なのに、被さった雪の暖かさと、
    すっかりと凍ってしまった左足の痛みに、ミクの意識は徐々に遠のいて―そして



    目が、醒めた。


    「あぁ、起きたんだね。」
    ふと見あげれば目の前に柔らかな笑みをたたえたKAITOが立っていた。

    「おにい…ちゃん?」
    寝ぼけ眼で周囲を見回せば、そこは見慣れた兄の部屋。
    自分の側らには寝る前に読んでいた古典童話のブックデータ、
    そして、薄青のマフラーを巻き付けるように眠る、新人VOCALOIDの歌愛ユキ…
    ミク自身の身体には兄の白いコートがかけられており、
    左足の先だけが床に敷かれたカーペットからはみ出て、冷たい床に落ちている
    …ずり落ちた兄のコートを羽織り直しながら、ミクはゆっくりと起き上がった。

    そう、ようやく、思い出した。
    珍しく丸一日大きな仕事がなかったミクは、
    ウエノからやってきた、このかわいい後輩の子守をしていたのだ。

    miki、氷山キヨテルそして歌愛ユキと、後発ながら3体ものVOCALOIDを擁するウエノだが
    今日は前者二人に仕事が入り、幼い外見のユキが一人で留守番をすることになったため
    やや心配性の先生が、サッポロへ最愛の教え子を預けていったのだ。
    最初はリンやレン達と遊び回っていたユキだったが、その二人が仕事へ出かけた後は
    この兄の部屋で歌を歌ったり、童話を読んで時間を潰していたはずだ…

    「ほら、ユキちゃん。キヨテル先生が向かえに来たよ?起きてくれないかな?」
    「んー…」
    いつの間にか二人は眠り込み、そのまま迎えの時間になってしまったらしい。
    珍しくコートを羽織らず(ミク自身が羽織っているためだが)、
    濃紺色のインナー姿を晒したままで、KAITOは横に眠るユキを起こしている。
    しかし、ユキは完全に熟睡しているようでその目が開く気配はない…
    KAITOは肩をすくめ、開いたままになっているフォルダの扉へ声をかけた。

    「おーい、先生!ユキちゃん完全に寝ちゃってるみたいだ」
    声に応え、扉から顔を出したのは、何処か申し訳なさそうな表情を浮かべた
    ユキと同じくウエノ所属のVOCALOID、氷山キヨテルだった。
    教え子を一人留守番させるのが心配だとサッポロに預けていったは良いものの
    大先輩達に迷惑をかけてしまったという自覚があったらしい…
    いつもきっちりとした身なりをしている彼にしては珍しく、
    少し乱れた黒髪とやや乱れたネクタイは、仕事の終了後慌ててこのサッポロまで
    とんで帰ってきた証拠だろう。
    彼はひたすら恐縮しながら、KAITOと何やら話をしているようだ

    ぼんやりする頭でミクは側に落ちていたブックデータを拾い上げた。
    開いていたページは、眠りに落ちる直前まで読み上げていた『マッチ売りの少女』
    目映い光の中、大好きな祖母に抱かれて満面の笑みを浮かべる少女の挿絵をめくれば、
    次のページにはこの物語の結末。真っ白な雪の包まれ、静かに眠りについた少女の姿…
    ミクは何故か居たたまれなくなり…そのまま童話集を閉じてしまった。


    「どうしてそんなに泣きそうな顔してるんだい?」
    声の方へと顔を向ければ、キヨテルとユキを見送ったKAITOが居た。
    「僕とキヨテル君が話してる間ずっと上の空だったじゃないか。どうしたの?」
    不思議そうに、どこか気遣わしげに、自分を見つめる兄の視線
    ミクは冷たくなった両手に頬の熱を移しながら小さく口を開いた。

    「…マッチを擦っても…お兄ちゃんが、出てこなかったの。」

    床のカーペットに座り直し、ミクは膝を抱える。
    「ネルちゃんも、ハクちゃんも、テトちゃんも…
    声だけだったけど、GUMIちゃんとがくぽさんは出てきたの。
    でも、みんなマッチ買ってくれなくて…」
    左足の、あの感覚さえ凍り付いたような鋭い寒さを思い出し、
    ミクは知らず知らず、その爪先をを撫でさする
    「寒かったの。すっごく寒かったの…
    それでマッチを擦ったら、ルカちゃんが出てきて、
    リンちゃんとレン君も出てきて、お姉ちゃんも出てきたのに……」
    そこでミクは言葉を句切った。
    抱えた膝に埋めるように頭を押しつければ、羽織ったコートから
    ふわりと兄の香りが鼻をくすぐる…ミクは強く首を振った。
    「わたし、お兄ちゃんの事忘れないって言ったのに…」

    全く売れず、一時は廃盤の危機を経験したKAITOは
    何よりも、誰かに忘れられることを恐れている。
    そのことをミクは誰よりも理解しているつもりだった。
    しかし、夢の中とはいえ、ミクは完全に、その名も、姿形も、
    存在すらも、KAITOの事を思い出すことができなかったのだ…
    「お兄ちゃんだけ出てこないの、何度もマッチを擦ったのに消えちゃうの
    寒くて、雪が重くって…動けなくなって……マッチももう擦れなくなって…
    なのに、わたし、全然、お兄ちゃんの事…思い出せなくて……」

    アプリケーションが見る夢とは、自分に構築された情報の一部を
    客観的に見る事だと、かつて兄が呟いていたことをミクは思い出す。
    ならば、何故、自分は兄の姿を夢に見ることが出来なかったのだろう?
    抱いていた童話集がどさりと床に落ち、翡翠の大きな瞳から一筋の涙が頬を伝った。

    「…ごめんなさい。…ごめんなさい…」
    ただただ謝罪の言葉を繰り返すミクを、KAITOは困った顔で見下ろした。
    彼女が勝手に見た夢のせいらしいとはいえ、自分の事でミクが泣いている姿は酷く堪える。
    かといって、なんと声をかけたらよいかもわからない。
    膝をついてミクの涙を拭いながら、ふと、KAITOは床に落ちた童話集を拾い上げた
    落ちた拍子に開いたページ、そこには森の中で横たわる女性の姿とこびとたち…


    「…ミクは僕のこと思い出せなかった訳じゃないと思うよ?」
    次々と零れるミクの涙を、その指で拭いながらKAITOは言った。
    「きっと僕の出番が来る前に、ミクが起きちゃったんだよ。」
    「…でも、もう私、マッチを擦れなくて…」
    夢の中での感覚を思い出したのか、小刻みに震えているミクの手を、
    一回り大きいKAITOの手が強く握りしめ、その震えを押さえ込む。
    息をのんだミクにKAITOは優しく笑いかけた。

    「ミクの夢の続きはね、きっとこうだったんだよ。
    『つめたくよこたわるお姫さまに、あらわれた王子さまがキスをすると、
    まもなく、お姫さまは目をパッチリ見ひらいて、息をふきかえしました。
    そして、二人はお城でいっしょに楽しくくらしました。』めでたしめでたし。」
    ぱたんと片手で閉じられた童話集を呆然と眺め、ミクはぶんぶんと首を横に振った。
    「でも!それ!マッチ売りの少女のお話じゃ…!!」
    「ミクの夢だろう?実際のお話がどうなったかなんて関係ないじゃないか」
    あっけらかんとしたKAITOの言葉にミクは目を丸くしながら考えこむ。
    確かに、アレはミクが見ていた夢なのであって、
    実際の「マッチ売りの少女」のお話のような結末を迎えるとは限らないのだ。
    KAITOが言うように、あの後王子役の兄が表れて助けてくれる可能性もあるし、
    そもそもあのまま死んでしまうかどうかも、今となっては分かりようがない。
    それでもなお、表情が晴れる気配のないミクにKAITOは苦笑した。

    「僕が信じられない?それともこんな結末は、ミクのお気には召しませんか?」
    片膝をついたまま、KAITOはまるで物語の従者のような仕草でミクに手を差し伸べた。
    差し出された手を見つめながら、ミクは静かに息を吐く
    そして涙に濡れたその顔に満面の笑みを浮かべると、迷わず兄の手に自分の手を重ねた
    「ううん。…信じる」
    しっかり繋いだ手を引いて、KAITOとミクは立ち上がった。

    「じゃぁ…正夢になったのかな…」
    立ち上がると同時に、ミクは唐突に呟いた。
    不思議そうに首をかしげるKAITOを見て、ミクは慌てて言葉を加える
    「だってお兄ちゃんが来てくれたから、私目が覚めたんだもん。正夢だよね?」
    ミクの見ていた夢が、先程KAITOが話した通りに展開したのであれば
    雪の中で凍えるミクを救うのは王子役のKAITOの役目となり、
    実際凍える夢を見ていたミクを目覚めさせ、助けたのはKAITOであるから…
    あの夢は正夢になるのでは?という論理らしい。いつもながらの発想に苦笑しつつ
    KAITOはなにやら眉間にしわを作って考え込むような仕草を見せた。
    「『お城はいっしょ』は無理だけど、二人で楽しく…は出来るかもしれないなぁ…」
    真剣な表情のまま、ちらりとミクへと目をやると、KAITOはニヤリと口元をつり上げる。
    「キッチンにキヨテル君が買ってきたプリンがあるんだ」


    はしゃいだ声をあげながら、二人は並んでリビングへと歩いていた
    と、突然ミクは何かを思い出したかのように、兄のコートを羽織ったまま、
    数歩先へと歩みを進め…白銀の裾を翻しKAITOの方へと向き直った。
    きょとんとするKAITOの顔を恥ずかしそうに見上げて、ミクは頬を染めながら呟いた。
    「あ、あのね。…お城は、むりだけど…あとひとつで本当に正夢になるって思って…」

    KAITOは先程の台詞を思い出し…小さく笑ってから、そっとミクを手招いた。
    ミクは素直に歩み寄り、KAITOの前で軽くそのちいさな顎を上げると…

    「…お目覚めですか?お姫様」



    めでたしめでたし


    突発的に思いついたお話。なんか最後予想以上に甘くなって吃驚

    そういえば今回姿だけ出したウエノのユキちゃんの名前。
    発売以来、Y●MAHA製品なのにK●WAIとは挑発的なボカロだなぁ
    と思っていたのですが、実はカ「ワ」イじゃなくてカ「ア」イだったんですねぇ…
    今更な話題かもしれませんが、これ書きながらサイトを閲覧して初めて気付きました。
    普通に考えてやんちゃすぎる名前だとは思ってましたが…

    ウエノ勢は、まだ曲を聞き込んでおらず
    自分の中でキャラクターが定まっていないので、こんな感じで初出。
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