がくぽさん初書きネタ
我が家のがくぽさんは、リリース前にC社ボカロ曲を一生懸命勉強したおかげで
年長組を若干ミーハーな感じで崇拝している真面目くんなイメージです。
日本を勉強するあまりに
変な方向に崇拝入った外国人みたいな感じです(その例えはどうなんだ)
神威さんの真剣勝負
ピンと張り詰めた空気が真新しい
イ草の香気と共に部屋を満たして
いる。
本来無機質な空間であるはずのフ
ォルダ内は障子や襖(ふすま)で
囲まれ、
障子を奥から照らすおぼろげな光
が東洋的な幽玄な明かりを空間に
もたらしている。
もはや、【才能の無駄遣い】タグ
が張られてもおかしくないほどに
、
VOCALOIDフォルダ内に作り込まれた、典型的
な書院造り。
その部屋の中央。小さな文机(ふ
みづくえ)を前に座して佇む神威
がくぽは
突然フォルダ内に現れた一つの気
配に、そっと瞳を開いた。
「あれ?待たせちゃったかな?」
現れたのは黒い箱を小脇に抱え柔
和な笑みを浮かべるKAITOだ
った。
がくぽは「否。」と小さく首を横
に振ると、素早く且つ流れるよう
な手捌きで袖を翻し、
今まで自らが座していた上座を退
き、小さく頭を垂れつつその場を
KAITOへと勧めた
「こちらこそ、お忙しい身であろ
うにご足労を駆けてしまい申し訳
ない…
我らぼーかろいどの偉大な先達で
あられる。KAITO殿の胸を借
りられることは、
新参者である私にとって誉れ
なこと。…この時を、待ちわび
ておりました」
初めて出会ったときからいっこう
に変わる気配のない、堅い言葉使
いに苦笑しつつ、
KAITOは人好きのする、その
柔らかな声で答えた。
「こちらこそ。君みたいな素晴らしい音の持ち主と対戦できるなんて光栄至極。」
白いコートの裾を押さえながら、
KAITOは勧められた席に腰を
据える。
下座へと座り直したがくぽと机を
挟む形で対峙する二人
KAITOは抱えていた黒箱の表
面を軽く撫でてから、彼にしては
珍しく、
挑戦的な表情をがくぽへと向けた
「…今日も良い勝負になるといい
ね」
「ええ。では…いざ、尋常に…勝
負!!」
「…いやいやいや…あんたらいい
加減ルールを統一しろと」
兄と新入りのやりとりを遠巻きに
眺めていたレンが、呆れたように
つぶやいた。
KAITOとがくぽの間に置かれ
た文机
その上には、枡目が描かれた木の
板と…さらにその上には、将棋の
駒と、
チェスの駒が混在して並べられて
いるというシュールな光景が広が
っている。
レンと同様、VOCALOIDフ
ォルダのリビングに腰掛をかけな
がら
兄達の異様な対局を眺めていたミ
クが、何かを思い出したようにぽ
つりとつぶやいた。
「んと、最初がくぽさんが「将棋
やりましょう」って言ったときに
、
お兄ちゃん、チェスのやり方しか
しらなくって…最初に色々覚える
のも面倒だし、
やりながら覚えていきましょうっ
てどっちかが言い出したんだよね
…」
「何スか、そのせっかちなんだか
、のんびりなんだかわかんない展
開」
さらにそのミクの横からは、リン
が至極まっとうな突っ込みを入れ
いる。
「む。何故その歩がそのような動
きを…」
「5ランクまで進んだポーンです
からアンパッサンだよ。
ほら、この間教えただろう?一
定条件下で敵のポーンが通過した
マスに、
自分のポーンを移動させて駒を取
る事ができるって」
「…ふむ。私としたことがそのよ
うな重要な戦術を忘却していたと
は…なんたる不覚。」
「おや?投了かい?」
「まさか。この神威がくぽ、これ
しきの逆境に背中を見せるような
真似は断じて!」
「…まぁ…お兄ちゃんもがくぽさ
んも楽んでるみたいだし…良いん
じゃないのかな?」
「そりゃそうなんですけれどね、
見てる側からすれば釈然としない
って言うか…
理解は一応してるんだけど、まっ
たくもって納得できないって言う
か…
逆に楽しそうだなとか思って横で
見てるとだんだんむかついてくる
って言うか…」
「つーか、にぃにぃもがっくんも
あれでどーやってゲームを理解し
てんだろね?」
リンの至極もっともな呟きをかき
消すかのように、
かこーん。とししおどしののんき
な音がフォルダ中に響き渡
った。
神、空にしろしめす。なべて世は
こともなし。
おしまい
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