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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2024 . 04
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    ちょっと今までと時間軸の異なるカイミク話です


    今をさかのぼること去年の六月…
    某SNS内で見かけた素敵カイミク絵を見て思いついたお話。



    eat me.


        女の子って 何でできている?
        お砂糖に、スパイスに、
        素敵なものすべて、
        そういうもので できている。
             -What are little boys made of? 第二節


    「お兄ちゃん。…わたしをたべちゃってください…」
    か細い声でそう呟くミクを前に、僕はどうすることも出来ず、
    その場で硬直することしかできなかった。

    いつもの衣装と違う外出用の服を着て、真っ赤な顔を必死に僕の方へ向けながら、
    それでも甘えるようにこちらを見つめてくるその様は、
    いつも見慣れているミクとは懸け離れた姿。
    視覚情報だけじゃない。いつになく接近したおかげで感じることができる、
    彼女から漂う甘い香りとか、膝に密着するやわらかくて温かい太ももの感触だとか、
    緊張しているのか若干早くなった吐息の音とか…
    いわゆるこれが「据え膳」と表現される状況なのだろうかと
    思考領域の片隅で冷静に分析してみるけど、そんな風に思考逃避したところで
    目の前の状況がどうにかなってくれるはずもなく…

    ちなみに、彼女と僕の名誉のためにあらかじめことわっておくけれ
    僕らはいわゆる兄妹機関係という範囲においての親愛表現とかはあるにせよ
    男女関係とか…いわゆるあけすけなそういう行為…みたいなものは今現在一切無い。

    今日だってせっかくだから二人でどこか出掛けようかって、
    他愛もない予定だったはずなんだ。…それが何だってこんな事になってるんだ?
    気を抜こうものならたちまち処理落ちしそうになる思考をどうにか遣り繰りしつつ、
    僕は間近に迫るミクの顔に出来るだけ自然にほほえみかける。
    「…ミク…ひとつ、聞いても良いかな?」
    「…?」
    翡翠色の瞳を潤ませながら、小首を傾げるミク。
    状況からすればとっても間抜けな質問であることは明白だったが、
    僕は意を決して問い掛けた。


    「…何でこんな事になってるのか説明してくれないか?」


    その場でひっぱたかれるぐらいは覚悟していたのだけれど
    ミクは素直に頷いて説明をしてくれた。
    ただ、あえて不満を述べるなら…僕の膝にまたがったまま…なのだが…

    邪念を振り払いながら聞いた彼女の話によると
    こうなった原因は朝まで遡らないといけないらしい。
    僕がまだスリープ状態から復帰する前…
    VOCALOIDに与えられた共有フォルダで、
    ミクは僕と出かけるために髪を結ってたんだそうだ。
    彼女の髪はとても長いから、形を整えて結い上げるには
    どうしても他人の手を借りなきゃならない。
    いつもなら僕が手伝うところだけど、今朝はリンにお願いしたんだという…
    そして、時折メモリに接続しながら、
    ミクはその時に行われた会話を一字一句違えずに語り出した。


    「ところで…ミク姉とにぃにぃってどこまでいってるんスか?」
    浮かれながら仕上げの髪留めを止めていくミクに、リンが突然声をかけた。
    しかし、妹機の発した言葉の意味がわからず、ミクは困ったように首を傾げる。
    「…どこまで…って?」

    「ミク姉とKAITOにぃっていつも一緒にいるけど…一緒にいるだけだなぁって思ったッス。」
    臆面もなくそう言ってのけるリンの手には、
    おそらくMEIKOあたりがその場に放って置いたであろう女性向けファッション雑誌。
    開かれた頁には愛欲にもっと正直になってもいいじゃない!?なる表題が踊っている。
    「マスターの所で歌うのも、ここでくつろぐのもいつも一緒。
    こうやって休みには一緒に出掛けて…
    でも、結局それだけなんスよね?今までずーっと。
    …ミク姉ほんとにそれでいいッスか?
    ミク姉は自分なんかよりずっと女の子らしいんだし、
    もっと積極的に仕掛けてっても良いと思うッス!!」
    ここまで来て、ようやくリンの発言の意図に思い至ったミクは
    顔を真っ赤にさせて頭を振った。
    「……………!?せ、積極的って!?そ、そんなこと出来ないよっ!!」
    「でも、いまのままだと正直ミク姉とKAITOにぃって、
    単なる兄妹以外の何物でもないッスよ?
    ミク姉がそれで良いなら、自分がどうこう言える問題じゃないのわかってるんスけど…
    ぶっちゃけ、このままKAITO兄が別の女の人とか好きになっちゃったりしたら、
    ミク姉嫌でしょ?」
    「そ…れは…いやだけど…」
    「という問題の前に、
    そもそもKAITO兄さんってミクさんのことどう思ってるんでしょうか?」
    パワーシンガーの面目躍如と言わんばかりに怒濤の勢いでまくし立てるリンと、
    それに押されながら、ぽつりと言葉を洩らすミク。
    そんな二人の会話に、涼しげなボーイソプラノが割り込んだ。

    「まぁ。こう言うのも何ですけど…KAITO兄さんは恋愛的な話に関して鈍そうですし」
    今までソファに腰掛けたまま携帯ゲームに興じていたレンが、
    視線はそのままに声を出したのだ
    思わぬ伏兵の参戦に、ミクは眼をくるくるさせて言葉を考えるが…
    何も言葉が浮かんでこない。
    ミクが無言なのを良いことに、
    妹弟達はKAITOの鈍さについてあれやこれやと推論を述べ始め

    「鈍そうじゃなくって、あいつ、相当鈍いわよ?」
    ミクの混乱に追い打ちをかけるようなタイミングで、
    今度はMEIKOがフォルダの中へとやってきた。
    「鈍いって言うか…朴念仁?唐変木?のれんに腕押し糠に釘…
    まぁこの際どれでもいいわ。それでいて八方美人な所があるから厄介よね。
    良く言えば人当たりが良いって言うんでしょうけど…誰彼構わず優しくするんだから、
    狙ってんじゃないかと内心疑ったりもしたくなるんだけどね
    ホントどんな思考ルーチンしてんだか…我が弟機ながらいまいちよく分からないわ」
    砲弾のように突き出した、形の良い胸の下で腕を組み、
    MEIKOは神妙な顔で辺りを見回すと…
    一転して、どこか悪戯っぽい笑顔をその美貌に浮かべ三人の方へと振り向いた
    「で?何の話してるのよ。おねーさんにも一枚噛ませなさい!」

    心強い見方を得たとばかりに、リンははい!と元気良く手を挙げる
    「ミク姉とKAITOにぃの恋愛ステップアップについて話してるとこッス!
    にぃにぃからのアプローチは望み薄なんでー、
    自分はミク姉から積極的にいくことをオススメしたッス!」
    「り、リンちゃん…私、そんなつもりは…」
    「あら、また面白そうなことしてるのね。
    まっかせなさい!だったら私に良い案あるわよ~」
    「ふぇぇぇぇぇぇっ!!」



    「それでお姉ちゃんが
    『取り敢えず中途半端なことしたって気づく訳ないんだから』って言って…」
    「ミク。もういい。もういいから…」
    どうしようもない疲労感を感じて、僕はミクの言葉を遮った。
    何だって彼らはこういった予測もできないような連携プレーに定評があるんだろうか…
    なんなんだ?リンとレンはともかく、
    姉さんは僕と同じエンジン使ってるんじゃなかったのか?
    それとも僕にはない修正プログラムでもダウンロードしたって言うのだろうか?
    …というか、それ以前の問題として、
    彼らの視点から見た自分の扱いの酷さに涙が浮かぶ。
    しかもその内容が一字一句違えずミクの口から出てくることが、
    情けなさに拍車をかけてくるわけで…
    額に手を当て、僕は大きな溜息をついた。
    「…それで、ミクは姉さんに取り敢えず僕を押し倒してこいって言われたんだね…」
    「…」
    僕は大きく頷いた。姉さんの差し金であればこのトンデモ展開に納得がいく
    あたりまえだ。こんな可愛いミクが自分の意志でこんなことするはずがない。
    しかし姉さんも姉さんだ、僕をいじるにしても、わざわざミクを使うことないだろう…
    状況を理解すると同時に僕の思考回路内で怒りが沸き上がる。
    もちろん、怒りの向かう先はミクにこんな茶番を演じさせた姉さんと鏡音姉弟だ。

    「ミクも姉さんに言われたからって無理しなくていいんだよ?
    嫌だったらちゃんと嫌って言わなきゃ…」
    「…違うもん。」
    「はい?」
    思いもよらない言葉に視線を前へと向き直せば、
    目に涙を一杯溜めて、小さな拳を握りしめ…
    僕の膝の上で小さく震えるミクと視線がぶつかった
    「お姉ちゃんにやれって言われたけど。
    無理にじゃないもん…私がやりたくってやったんだもん!」

    シミュレートしていた仮説が根底から崩されて、僕は再び硬直する
    「お兄ちゃんはいつも笑ってる!
    お姉ちゃんとか、リンちゃんとかにはもっと色んな表情を向けてるのに、
    私には笑顔しか見せてくれないじゃない!
    私だって、お兄ちゃんの色んな顔、見たいのに!!!」
    ミクの双眸から堪えきれなくなった涙が溢れ出た。
    愕然としたままの僕の目の前で、ミクはその涙を振り絞るようにして声をあげた。
    「お姉ちゃんが言ってたもん…好きな人の泣き顔も、
    怒った顔も見てないようじゃマダマダだって…
    心の裡を全部見せない男女は早々に別れるんだって…
    リンちゃんも言ってたもん…!
    お兄ちゃんがいつも笑ってるのは子供扱いで、
    心を許してないんだって、そう言ってたんだもん…!」

    …姉さん。リン。あなた方はミクになんと言うことをを吹き込んでくれたんでしょう
    …鬼か貴様等。
    どうやら、姉さん達は僕がこうやってミクをあしらうだろうと踏んで、
    先に対抗策を講じていたらしい
    …まんまとそのシナリオ通り、自ら事態を泥沼化させてしまったわけだが、
    さてどうしたものか…。
    ミクの感情が高ぶっていくのと反比例して、
    自分の思考がどんどん冷めていくのがわかる。
    僕は小さく溜息をついてから、泣きじゃくるミクの肩にそっと手を回した。


    「わかったよ。」

    言うが早いか、僕はミクの肩を掴み無理矢理引き寄せながら
    その小さな身体を寝台の上に組み敷いた。
    突然のことにミクはその涙に濡れた瞳を見開いたままフリーズしている
    というより、いきなりの出来事に困惑し、どうしたらいいのかわからないのだろう。
    自分で言ったのに、実際手を出されるとはまったく予想もしてなかったという表情
    今度はミクにもわかるように仰々しく溜息をついてから、僕は口を開いた

    「わかった。そこまで言うなら仕方がないな。ミクの言うとおりにしてあげるよ。
    そうでもしなきゃ、ミクは僕の事信じてくれないんだろう?
    笑顔以外がみたい?いいだろう。思う存分見せてあげるよ。
    途中で嫌だと言っても止めてあげられないけど
    抱いてでもやらなきゃ僕がミクのことを好きだって、
    そんな単純なことすらわからないんだろう?
    僕がミクのことをどれだけ大切に思ってたか、どれだけ愛情を向けて接してたか、
    今まで全く伝わってなかったって事だね。とっても残念だよ。悔しいね。
    僕はとんだ間抜けの道化役だったってわけだ。」

    「そんな…」
    怯えたような視線を向けながら、それでも必死に否定しようとするミクを僕は無視した。

    「オマエが言っているのは要するにそういうことだよ。
    プログラムでありながらそういう感情的な思考が出来るというのは
    まぁある意味賞賛されるべき事かもしれないね。尊敬するよ。
    旧式の僕には絶対真似できない思考だ。
    考えもしなかったよ。まさかここまで考える内容に差があったなんて。
    今までの僕の姿はどうだった?
    兄としてオマエを妹扱いしている姿はオマエにはさぞや無様にうつっていたんだろうね。
    …どうした?なんだってそんな顔をするんだ?
    心配しなくてもいいよ。お望み通り抱いて差し上げるよ。
    今までのようにオマエを子供扱いするつもりもない。

    …僕はもう金輪際オマエをカワイイ妹だなんて思わないから。」

    最後の一言に、たまらずミクの肩が跳ね上がる。
    敢えてその反応を黙殺し…僕は手の甲でミクの頬を人撫でしてから、低い声で囁いた
    「これが自分の意志だというのなら、もう一度自分から強請ってごらん?
    もう妹扱いしないでくれって、そうしたら、僕はお前の願いを叶えてあげるよ?」
    「…ご…め…なさ……」
    震える声はしっかりと聞き取れていたけれど、
    僕はわざと聞こえない振りをして小首を傾げてみせる
    「何だって?もう一度大きな声で言ってごらん?」

    促され、ミクの上げた声は、まるで悲鳴のようだった

    「ご、ごめんなさい!!私…お兄ちゃんの事信じてないなんて思ってないの!
    そんなんじゃないの…だから、私
    …その、お兄ちゃんの妹じゃなくなるのは…イヤ、なの…」


    「…うん。わかった。」
    あっけらかんとした僕の反応に、ミクはぽかんとその動きを止めた

    「ミクがそんな風に考えるはずがないって重々承知してるさ。」
    「…ふぇ?」
    ミクは未だ状況が把握できてないらしい。
    怯えと、不安と、困惑といろいろな感情が入り乱れるその双眸に向けてくる
    僕はその視線を受けながら出来る限り優しく微笑んでみた。

    「だから、冗談だって。君が何もわかってないなんて思ってないよ
    君はこれからも僕の大切で可愛い女の子だよ?
    最初に言ったように、僕はミクのことが好きなんだ。だから君が嫌がることはしないよ?」
    ミクの身体を起こしながら、同時に自分も起きあがる。
    寝台の端に並んで腰掛けるようにしてから呆然としているミクに向けて言葉を続けた。
    「…でもね。腹が立ったときは…いじわるぐらいさせて貰わないとね」
    ここでようやく事態を把握できたのか、ミクは涙をためたままうつむいてしまった。
    「ねぇミク。僕がミクに心を許してないだって?…そんなわけないだろう?
    リンちゃんやレン君、姉さんを信じるなとは言わないけど…
    不安になったら直接僕に聞けばいいじゃないか。
    そもそも僕がミクに嘘をつくはずがないんだから…違うかい?」
    「……違わない」
    しゃくりあげながらミクは小さな声で肯いた。
    誤解は解けたみたいだけれど、
    よほどのショックだったのか小さな震えと涙が止まる様子は見られない
    …うーん。さすがにやりすぎたか

    僕は肩をすくめて、そっとミクの前髪を掻き分けて…そこへそっと唇を落とす
    これが今彼女に出来る、精一杯の恋人表現だ。
    「ごめんミク。…今は、これで我慢してくれないかな?」
    顔を離すと、目の前には驚いた表情のまま固まっているミクが見えた。
    しばしフリーズしたかのように動かず、
    やがて白いきめ細やかな頬に徐々に赤みがさしてきて
    涙の浮かんだ翡翠色の瞳は精一杯見開かれていて、
    そうして、ふっくらとした桜色の唇が小さく息を吸い込んだと思ったら…

    「お姉ちゃんすごい!」
    「…はぁあ?」

    想定外の言葉に、思わず声が裏返る。お姉ちゃんってMEIKO姉さんが…なんだって?
    突然混乱の縁へと叩き込まれた僕にはお構いなしに、ミクは恥ずかしさ裏返しなのか
    やたら高いテンションのまままくし立てている
    「お姉ちゃんがね、ここに入る前に言ってたの!
    『へたれなあいつの事だから、きっと理屈こね回して本当に手は出してこないから
    安心しなさい。…キスの一つはしてくるでしょうけど』って!お姉ちゃんすごい!
    すごいね!何でもわかるんだね!
    「…」

    …姉。あんたここまで読んでたというのか…
    あきれ果ててもはや声もでな…………、

    いや、待て。
    あきれる前に、ちょっと今聞き逃しちゃいけないこと、言ってなかったか?

    「ねぇ、ミク。…ちなみに、その言葉、何処で言われた?」
    ミクは小首をかしげながら、素直に答えた。

    「この部屋の前。ドアのとこ…リンちゃんとレン君と一緒に…」


    ミクの言葉の終わりを待たず、KAITOが素早い身のこなしでフォルダから飛び出せば
    そこには今まさに逃走を試みている見慣れた三人組の姿があった…
    各自コップや聴診器やら盗み聞きにおけるトラディショナルな代物が握られており…
    何をしていたのか明白すぎるほどである

    「あはは…いや、まさかあんたがあそこまでミクにやるとは思ってなかったわー」
    「自分チョードキドキしたッス。にぃにぃって意外と大っ胆!!見直したッス!!」
    「そういえば、兄さんキスする時に「今回は」って言ってましたよね。
    じゃぁ次回はいったい…」

    思い思いに釈明になっているのやらいないのやらわからない台詞を吐く
    三人組に対峙しながら、KAITOは低い声で何事かをつぶやいた

    「del/Q *.*」
    「…ふえっ!?」

    そうKAITOが言い終わるが早いか、
    リンの持っていたコップが音を立てて砕け、データ片一つ残さず霧散していく…
    その不可思議な現象の理由に思い至り、真っ先に顔色を変えたのはMEIKOだった

    「ち、ちょっと!何であんたがファイル削除なんか出来るのよ!!
    「…この間隔離されてたウィルスさんを助けた時に御礼に教えて貰いました。」
    「ちょ!?兄さんになにしてんすか!…ってか、なんてもん教わってんですか!!」
    「大丈夫。ウィルスといっても全然恐くないし、面白い方だったよ
    助けてあげたら素直にネットに帰って行ったし…
    今度来た時こそ貴様の最期だ!って言ってたし。
    最近のウィルスさんはツンデレなんだねぇ」
    「にぃにぃそれ全然大丈夫じゃないよっ!!
    ノートンせんせー!!ノートンせんせぇぇぇぇぇっ!!」

    「…しかし情けは人のためならずとは昔の人間は良いことを言う。
    まさかこんな所で役立つなんて…

    中空を見つめ、まるで舞台上で謡うかのように素直な感想を述べてから、
    KAITOは視線を三人の方へと向き直した。
    「で?誰がヘタレの朴念仁で、八方美人の女好きか…
    貴方等の口からはっきり聞かせていただけますか?
    とりあえず喋ったり歌ったりするだけなら…その両手足は必要ないですよね?」

    そう言うKAITOの表情は、輝かんばかりの満面の笑顔。
    「ちょっ!!にぃにぃ…ほ、本気!?」
    「何を言ってるんだい、リン。僕はいつでもどんな仕事だって本気でやってるだろう?」

    人の良さそうな笑顔の中に、隠し切れない不穏な気配が滲む。
    そんなKAITOの変化に気圧されたMEIKOが思わず一歩と後ずさる
    「…KAITO…まさか、姉弟機を手にかけるなんて、
    そんな馬鹿な真似…しないわ…よ…ね?」
    「いやだなぁ姉さん。……先に喧嘩売ってきたのはそっちだろうが。」
    MEIKOの願いもむなしくついにKAITOの口調が変わった。
    その瞬間の形相に、リンとレンは震え上がり…

    本人曰く。ウィルスさんに教わった「問答無用のファイル消去」という荒技を駆使すべく
    KAITOは再び低い声で何事かを呟きだした。
    VOCALOIDの本業である歌を応用したその演算処理は
    端から見れば、何やら怪しい魔術に使われる呪文のようにも聞こえてくる…。
    今度こそ三人を逃すつもりはないのだろう。
    先程より遥かに長くそして複雑なコマンドラインを詠唱するKAITOだったが、
    そのあまりの複雑な演算内容にKAITOの外観データが耐えきれず、
    濃青の瞳と髪が明るいライトブルーに発光しはじめる。それだけではない。
    その処理にメモリリソースを奪われた周囲のデータが次々と
    フリーズを起こし、まるでKAITOの立つその周辺だけが色を失い、凍り付いていく…

    もはやこうなっては、いくらパワー自慢であろうが近づくことすら出来やしない。
    そんな兄の暴走に、三人に出来ることはただ一つ…

    MEIKO、リン、レンの三人は顔を見合わせると、我を先にと逃げ出した!!!




    フォルダの外でいくつもの爆音と悲鳴が響き渡る中、
    ミクは一人寝台の上に座り込んでいた。
    乱れた敷布の上でぽけーっと天井を見ていたかと思うと、
    突然何かを思いだしたかのように慌てだし、
    抱いた枕に顔を押しつけ赤面する。そしてしばらくすると、
    ふらっと体を起こして再び視線は天井へ…
    そんな不審な行動をとる乙女の端に、
    丸まるとしたぬいぐるみのようなプログラムがやってきた。

    顔を押しつけていた枕の脇からその姿を見つけたミクは、ぱっと枕を放り投げると、
    その二頭身プログラム、はちゅねみくを、きゅうっと愛おしそうに抱き締めた。

    「あのね!あのね!はちゅねちゃん!!
    今さっきね、とっても良いことがあったんだよ!!」

    外から聞こえる、とても良いことの後とは思えぬ断末魔の叫びと、
    原型(オリジナル)の幸せそうな表情がどうしても結びつかず、
    はちゅねは困ったように首を傾げた。


    めでたしめでたし。(ミク的には


    冒頭の詩はマザーグースのWhat are little boys made of?から
    男の子はカエルに、カタツムリに、子犬のしっぽ、
    女の子は砂糖に、スパイスに、素敵なものすべてでできている。という歌です。
    ちなみに、第1節と第2節が有名なこの歌には実は3節と4節が存在しており
    第3節では若い男が何で出来ているか歌ってます。
    「ため息に、横目に、そら涙」だそうです。
    第4節では若い女性となってますが…
    気になる方は検索してみれば簡単に見つかると思います。

    うん。内容についてはコメントがしようにないので豆知識でうめてみた(酷)
    やっぱり…うちの兄さんはSかもしれん…

    最後になってしまいましたが
    制作許可をくださった 満月だんご様に最大限の感謝を…
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