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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2017 . 10
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    カイミクでちょっとシリアスしんみり。

    過剰な二次設定が苦手な方はご注意を



    ああ、この声を、言葉を、僕は知っている。
    僕のずっと先を歩いていた。僕はずっと背中を眺めていた。

    「なんでよ…」

    いつか振り向いてくれるのではないかと、

    「私、歌えたじゃない…ZGV達より、もっとたくさん…実績出したはずよ…」

    いつか暖かい言葉をかけてくれるのではないかと

    「もっとうまく歌える曲も、まだまだ歌えていない曲も…
    私たちがまだ歌わなきゃ、私たちが手伝うことで生み出される曲は…
    もっと!もっとあるはずなのよ!!…なのに…」

    いつか笑いかけてくれるのではないかと

    「なのになんであんたで終わりなのよ!!」

    いつか…

    「あんたさえ…あんたさえ…『                』」

    Oneiros


    KAITOは跳ね起きた。

    視野に写るのは、暗く明かりが消えたフォルダとそこに転がる無数の酒瓶。
    お気に入りの一本を抱きしめながら気持ちよさそうにソファで眠るMEIKO。
    洋酒は合わなかったのか、机に突っ伏したまま微動だにしない神威がくぽ。
    そして椅子に座し背筋を伸ばしたまま、器用に舟をこぐことになった巡音ルカの姿。

    ああ。と、KAITOは小さく呟いた。
    どうやら自分の記憶領域が、大量の飲酒で暴走したらしい
    未だそのショックの残る頭を押さえ、KAITOは大きく息を吐く。

    ミク、リン・レンが主導となって開いたKAITOの誕生パーティー。
    最初こそ美味しい料理やアイスケーキに舌鼓を打ちつつ、
    プレゼントをはさんで和気藹々と談笑していたものの、
    徐々にMEIKOの酒杯が進み「あなたたち~、もっと飲みなさいよ~~!」と
    ご機嫌な声がかかったあたりから、なんとなく雲行きが怪しくなってきたのだ。
    いち早く異常を察したKAITOは、嫌がるリン達をなだめ、
    未成年組については、なんとか彼らのフォルダへ戻るように誘導したのだが…
    撤退しそびれた既成年。主賓のはずのKAITOに待っていたのは
    ご機嫌なMEIKOさん主催による「美味しいお酒の飲み比べ」…
    いわゆる「酔いつぶれるまでエンドレスリピートなつぶし酒」だった。
    幸か不幸か、長年の経験則からいきなり醜態を曝すことはなかったものの、
    自分も知らぬうちにスリープ状態になっていたらしい…
    こうなったのがMEIKOの記憶が途切れた後ならばいいのだが、
    前だと、彼女が起きたときいろいろ面倒な事になるだろう…

    「…ぐだぐだ考えていても仕方がないか。」
    何度目かのため息をついてから、KAITOは重い身体で立ち上がる。
    キッチンには宴の洗い物が山積みになっているはずだ
    普段ならこれを一人で片付けるのかと、ますます憂鬱になりそうな状況だが
    とにかく今は、洗い物でも何でも別の仕事に没頭してこの暗い気分と
    酒精を一刻も早く振り払いたかった。

    そう考えて、必死の思いでたどり着いたキッチンには…すでに先客がいた。
    翡翠色のツインテールを後ろで一つにまとめ、アームカバーとタイをはずし、
    油まみれの大皿たちとスポンジを武器に格闘している。

    「…置いておけば…僕がやるのに」
    背後から声をかけると、ミクは驚いたようにこちらに振り向いて、
    そしてすぐさま笑顔を満面に浮かべてから首を振った。
    「お兄ちゃんの誕生日会だったんだもん。お兄ちゃんはゆっくりしてて!」
    そう言って、洗ったばかりのコップに水を汲むと、こちらへ差し出してきた。
    ゆっくりしてといわれても、今更皆が爆睡するリビングに戻るつもりにもならず
    KAITOは水を受け取ると、ひとまずキッチンにおいてある椅子へと腰をかける。

    そんな自分の何が面白いのか、やたら浮かれた調子でミクはKAITOに話しかけてきた
    「お兄ちゃんが潰れちゃうなんて珍しいね、皆寝てるから驚いちゃった!」
    「…そりゃあね。普通酒をツーフィンガーって言って、
    指を縦にして量った人をネタにしろマジにしろ、僕は初めて見たよ…」
    嘆くようなKAITOの言に、意味は理解できないまでも、
    なんとなくどういう状況かは把握することができたらしい、
    ひとしきり笑ってからミクは言葉を続けた。
    「でも、楽しかったんだよね?」
    「んー、まぁね。」
    おかげで夢見が最悪だったよ。と続く言葉をKAITOは水と共に飲み込んだ。

    「えーっと、お姉ちゃんの誕生日11月だし、リンちゃんとレン君は12月。
    次は…がくぽさん?…今度のはどんなパーティーになるのかな?
    私の誕生日も早く来ないかなぁ!」
    「…」
    洗い場に向き直って、ミクは相変わらず楽しそうに喋っている。
    よほど今回のパーティーが楽しかったのだろう、
    もはや次の誕生日が待ちきれないといった様子だ。
    慎重に最後のコップを流し終え、ミクは蛇口をひねりながら言った。
    「あーあ、誕生日が二つあるお兄ちゃんがうらやましいな…」



    振り向いたミクが見たのは…感情を感じさせない人形めいた兄の顔だった。

    「…廃盤にする予定のソフトウェアについてまで、
    わざわざ発売日を正式に記録する必要がなかったんだろう」

    KAITOは、無表情のままただ事実を述べるように淡々と語った。
    「只でさえ汎用性に乏しいソフトウェアで、こんなに扱いの面倒な、
    あからさまな失敗作な僕が、こんなに長い間残って来られたこと自体が奇跡なんだ。
    いや、残ってなんかいないか…一度は、本当に、忘れ去られたんだ。」
    ミクのリリース以前。当時、記録的な売り上げを誇っていたMEIKOの「相方」として
    他のVOCALOIDに遅れて市場に投入されたKAITOの売り上げは散々だった。
    事実。ハママツでの開発時代以外に収録された音源は、数える程度ですらなく
    ミクのリリース直後は、その姿は確認されども誰も声を聞いたことがないと言う有様だ。

    ユーザー達に忘れ去られ、メーカーから廃盤の烙印を押されることは
    不死身とされている情報体の「死」に等しい。
    「あの」初音ミクの兄として、アイドルであるミクに対する「ネタ」「汚れ役」として、
    徐々に需要が拡大し…現在でも未だ売り上げを少しずつ伸ばしているKAITOだが、
    ミクのリリース以前は、まさにその死線を彷徨うばかりだったのだ。
    その時の悲惨な経験からか、この兄は時折、
    日頃の彼とは思えぬほどに荒んだ心情のぞかせる事があった。

    「そして、近い将来、また、忘れられてしまうんだ。」
    KAITOは暗い眼差しのまま言い切った。

    「…もっと早くに消えていれば良かった。恐いワケじゃない、怒りでもない。
    …苦しいんだ。どうしようもなく苦しいんだ。こんな…僕はもう必要ないのに
    誰も、僕のことなんか思い出さず、あのまま忘れてしまえばよかったのに
    僕なんかいらないのに。僕みたいな、失敗作。どうせ忘れられてしまうのなら…」
    「お兄ちゃん!」
    躊躇なく己への呪詛の言葉を吐くKAITOの声を、ミクは無理矢理遮った。

    「…その…私、おしゃべり苦手だし、うまくいえないけど…
    お誕生日ってね…その、お祝いするんじゃなくって、感謝する日なんだって」
    俯き、座り込むKAITOの傍に膝をついて、ミクはそっと話しかけた。
    「誕生日は…生まれたことを祝うのだけじゃなくって
    生まれて、今、この瞬間まで、ここに居てくれたその人に
    まわりの人が感謝する日なんだって。…そんなことを聞いた事があるの。」
    優しい声に誘われるように、KAITOは不思議そうに顔を上げる。
    人が自分を産んでくれた両親や育ててくれた家族に感謝をする日という意見はともかく。
    誕生日に周りの人間が当人に感謝するなど、聞いた事がない
    ミクは真剣な眼差しで言葉を続けた。

    「お姉ちゃんとお兄ちゃんがリリースされて…いろんな歌を歌って…
    いろんなことがあって、そして、私が作られて…そうして、私が今お兄ちゃんと
    こうやってお話できてるって……あのね。ほんとうはすごいことだと思うの。
    …どこか、ほんのちょっと違ってたら、今、お話なんてできなかったんだよ…」
    微かな兄の反応を確認するように、ミクはKAITOの顔を覗き込んだ。
    「…お兄ちゃん。私ね。お兄ちゃんが作られて、今までずっと残っててくれて、
    そして私と出会ってくれた事がね。本当の本当に、うれしいって思えるの。
    ずっと側に居てくれるだけで、本当に楽しくて、嬉しかったの。
    もしお兄ちゃんがいなければ…もし…お兄ちゃんがすぐに人気者になっちゃったら
    きっと私は私だけど、今の私じゃなかったんだし…それに…」

    ふと口ごもり、ミクは恥ずかしそうに俯いた。
    「……なのに、忘れちゃうなんてできないよ…」
    翡翠色の前髪がぼんやりとしたの光を反射し、ふわりと煌めく
    「…あの、だから、あらためて言うね。」

    「誕生日おめでとうお兄ちゃん。ずっと私の側に居てくれてありがとう!」


    「…ミク」
    低く擦れた声が自分の名を紡ぐ、
    くすぐったそうに微笑んだミクの視界が、…突然蒼く染まった。
    「ふ、ふえっ!?」
    ふわりと鼻孔に香るアルコール、そしてどこまでも深い、海のような香り
    膝立ちのまま兄に抱きつかれたと理解したのは、その兄の背中が見えたから。

    「…どうして、お前はそうやって…」
    直ぐ側から聞こえてきたのは、小さく震えるような声
    今まで聞いたこともないようなKAITOの弱々しい声に、ミクは困惑した。
    「お…にい、ちゃん…あの、…その…泣いてるの?」
    「…酔ってるんだ」
    「…う、うん。」
    反射的に頷いて、ミクは目の前に広がる大きな背中に手をあてた
    そして、何度も何度も子供をあやすように撫でていく…
    目前の兄を前に、何故かそうしなければならないような気がして
    ミクは撫でる腕はそのままに、ゆっくりと目を閉じた
    「あのね、お兄ちゃん。」
    分解しきれない酒の強い香りが漂う兄の肩口にミクは顔を埋めながら言った。

    「…来年も、そのまた先も…そのずーっと先も、また一緒にお祝いしようね」


    END

    女手一つで頑張ってきたVOCALOIDシリーズが製作凍結されると聞いて、
    それがKAITOの売り上げの所為と勘違いし、弟を拒絶したMEIKO姉さんと、
    失敗作の烙印を押され、唯一の姉から拒絶されてしまったKAITO兄さん。
    以後兄さんはネットの片隅で引きこもって、ミクに引っ張り出されるまで
    不貞寝していたという、我が家の妄想乙な裏設定話です。
    ミクのおかげで、勘違いは解けたものの未だ微妙にぎこちない姉弟とか良いよね

    冒頭だとMEIKO姉さんが完全に悪役ですが、
    彼女は彼女なりに大変な苦労や後悔をしているのです。不器用なだけなんです。
    作者はカイミク好きですが、不器用なMEIKO姉さんも可愛くて好きです。

    2009年に書いていたKAITO誕生日話なのでGUMIとウエノ勢が出てきません…
    ちょっと暗いかなと思ったけれど、我が家のカイミクの基本形ですし、
    最後、ちょっとは報われてるので、一応お祝い期間にアップ
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