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日本語版VOCALOID(特に寒色兄妹)好きな 中途半端な絵描き&文字書きの徒然日記
2017 . 11
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    今更な題材でSFパラレル小話。
    ホントは8月10日UPめざして書いていたにもかかわらず…無理だったorz
    
    SFといっても、どこかのほほんとした感じを目指したつもり…すこしふしぎ?
    というか話中に出てくるSF用語はほとんどやっつけです。突っ込み不可。
    そして我が家のパラレルにしてはMEIKOさんがでばってます。
    
    
    
    元祖RGB組(友人命名)の疑似家族話です
    OKなかただけどぞー
    
    
    
    一面に広がる緑の草原を、3つの人影が歩いていた。

    先頭を歩くのは、真っ赤なパイロットスーツに身を包んだ茶髪の若い女性だ。
    腰の高さまで生えた草を、なんの迷いもなく、掻き分け、踏み越えながら、
    その視線はただまっすぐと一点を見据え躊躇いなく歩みを進めている。
    それ続くのは、彼女が歩くことによって出来た道をたどる少女だった
    取り囲むように生える背の高い草達には、まだまだ背が届かないため、
    遠方からでは頭の上につけている二つの髪飾りしか見えないことだろう。
    まだ幼い身体にぴったりと張り付くような耐圧スーツと、
    それと全く不釣り合いな毛糸の外套をまとい、
    その腕にどこかその少女自身に似たツインテールのぬいぐるみを抱えたまま、
    少女は脇目もふらず前を歩く女性の後を必死になってついていく。
    そんな彼女の数歩後ろには、白いコートを羽織った青髪の青年が続いていた。
    獣道のような軌跡を必死に歩く少女が、いつ倒れても支えられるように、
    かといって、お節介を嫌がる少女の威厳を損なわないように微妙な距離を取って。
    青年は少女から決して視線を離すことなく 列の最後尾を務めている。

    どれぐらい進んだだろうか、青年が、前を歩いていた少女の『異常』に気づいたのは。
    異常といっても危機的な内容ではなく。むしろ、少女と旅をするようになってから
    幾度となく遭遇した反応で…
    「ねぇ、おなかすいたの!」
    青年が声をかけようとするより半瞬早く、少女の声が草原の中に響き渡った。
    歩く事にも飽きてしまったのだろう。そのまま倒れた青草の上にぺたんと座り込むと、
    前を歩いていた女性を、その愛らしい瞳で精一杯にらみつける。
    その幼いながらもしっかりとした恨みの念に、女性は大仰な溜息をついてみせると、
    少女に視線の高さをそろえるため、自らもすとんと青草の上にしゃがみ込んだ。
    「ねぇ、我が侭を言わないで。朝食なら採ったでしょう?」
    「でも…ミク、おなかすいたんだもん。」
    むぅと頬をふくらませてしまっては、テコでも動かないことは百も承知だ。
    困り切った表情の女性がこの様子を見守っていた青年の方へと視線を向けると、
    その視線で全てを悟ったのだろう、口の片側だけを器用に歪ませ青年は苦笑した。
    「…わかりました。何か無いか探してきます。」
    「頼んだわよ、【CRV02】」
    「はい。では、【CRV01】とミクは先に管制室へ向かっていてください。」





    宇宙船Palumbus号の冒険






    一面金属とシリコンとクォーツの板(プレート)に囲まれた部屋。
    所々壁や天井の隙間から緑に苔むしたツタや根っこが浸食してはいるものの、
    この部屋の持っている本来の機能は一部たりとも損なわれてはいないようだ。

    そんな部屋の中央、幾重にも光る窓(ウィンドウ)が浮かび上がった巨大な板を前に、
    深紅のジャケットを肩にかけたCRV01は、凄まじい早さで手と指を動かしていた。
    それだけではない。彼女のまるで大型のヘッドフォンのような部分から這い出した、
    幾つものケーブルが全て彼女の叩く操作盤(コンソール)へと繋がっており、
    その腕が一つのキーを叩く度、その視線が一つの窓を捉える度に、怒濤の勢いで
    正面の画面が切り替わっていくのが見える。

    そんな視覚の洪水が起きているすぐ横で、ミクと呼ばれた少女は
    ぬいぐるみを抱きかかえながら大きな椅子に腰掛け、うとうとと舟をこいでいた。
    そびえ立つかのような背もたれと、包み込むかのような立派な腕おきは、
    その幼い身体からすれば、椅子と言うより揺りかごと形容した方がよいかもしれない。

    「ただいま戻りました」
    「んぅ…おにいちゃん、おかえりなさぁい」
    壁に埋め込まれたモーターの高い音と共に壁が開き、先ほどの青年が入ってくると、
    ミクは眠い目をこすりながら、彼を迎えようと、腕置きの脇から顔をのぞかせた。
    そんな少女の様子にCRV02はその青い瞳を細め、腕に抱えた赤い果実を一つ、
    そのちいさな鼻先へと差し出した
    「はい、下の区画の幹に沢山実ってましたよ」
    「うわぁ!ありがとっおにいちゃん!   …いただきますっ!!」
    迷い無く木の実にかぶりつくミクを不安そうに眺め、CRV01は青年に問いかけた。
    「…大丈夫なの?汚染とかされてないでしょうね」
    「簡易分析では毒性は検出されませんでした。残留放射能反応もあません。
    それに、糖を多く含んでいたので、ミクにはきっと甘く感じられ…
    「んー!すっぱーいっ!!」
    見事なタイミングで発せられたミクの言葉に、二人は思わず顔を見合わせる。
    やがて、見開かれた青い瞳が申し訳なさそうに伏せられ、CRV02はぼそりと呟いた。
    「…なかったみたいですね…有機酸を考慮するのを忘れていました。
    「だから、同型機に比べて貴方は抜けてるって言うのよ。CRV02。」
    CRV01は今日何度目かの溜息をはきながらミクの側へと膝をつくと、
    果汁でべたべたになったミクの口元を、懐から取り出したガーゼで丁寧に拭う。
    「ミク、やめときなさい。船に戻ったらまともな食料をだしてあげるから」
    「ん~、でもこれ、すっぱいけどあまくておいしいよ?」
    思いもかけないミクの反応に、CRV01はどこか不服そうに首をかしげた。
    「…やっぱり、天然物が一番って事かしら?」

    「無意識に天然成分を欲しているのかもしれませんね。…それで、いかがですか?」
    CRV02の発言の最後。その問いかけはミクに関してのものではい。
    当然それを理解したCRV01は無駄のない操作で立ち上がると、
    再び巨大なスクリーンの前に立ち、音をたててキーをを叩いて見せた。
    「無理ね。」
    現れたいくつかの画像をにらみつけながら彼女はきっぱりと言い切った。
    「いつもの通りよ。『失踪』以前のデータは全部無くなってる
    それと、電池パネルの4割が止まってるわね、空調システムもほとんどダメダメ。
    幸い外装に傷がないのと、調光が生きてるおかげで樹木(プラント)達が
    光合成してくれてるからミクの活動に支障があるレベルではないけれど…」
    赤いマニキュアがほどこされた指がコンソールをなぞると、正面のスクリーンに
    巨大な金属の柱と、それに絡みつくように這う無数の植物の映像が映し出された。
    「主軸(メインシャフト)にプラント達の根が絡みついて、締め付けてるのよ。
    もう既に何カ所か崩壊してる部分もあるわ…」
    「修復は不可能なんですか?」
    CRV02の問いかけに、CRV01はゆっくりと頭を横に振る
    「…新たな主軸を持ち込めばあるいはって処。それでももって10年かそこらね」
    「結局ここも完全放棄された後という事ですか」
    どちらからともなく溜息をついてから、CRV01はスクリーンへ、否、
    その向こう。いくつもの金属の障壁を越えた真っ暗な世界へ声を荒げていた。

    「まったく…こんな子一人おいて、『人間』達はどこ行ったんだか!」


    *****


    「CRV01、CRV01。聞こえますか?」
    宇宙船Palumbus号のメインデッキ。
    白と黒のドットが明滅を繰り返していたそのスクリーンに突如青髪の青年が映し出された。
    「…どうしたのCRV02。もう少しでメトセラ型ドングリが作れるところだったのに」
    操舵シートに深く腰掛けスクリーン上を眺めていたCV01は、心底不服そうに、
    彼女の「カワイイ」ドット達の進化を中断させた張本人を睨み付けた。
    彼の、文字通り、ライフワークである恒星観測が終わったというのなら
    デッキに直接戻って来れば良いのであり、わざわざ船内通信を使う必要はないのだ。と、
    少なくとも5桁は繰り返されたやりとりに、CRV01は不機嫌をあらわに対応したのだが
    …当のCRV02はそんなことを気にする素振りも見せなかった。
    「ライフゲームも結構ですが、正体を確認できない人工物がこの船に近づいてきますよ。」
    それどころか、CRV02の放った内容はその飄々とした声に全く似合わぬ不穏な内容で、
    聞くやいなやCRV01は血相を変えてシートに備え付けられた操作卓に指を滑らせていた。

    スクリーン上、CRV02の映像を押しのけて中央に陣取ったレーダー画面には、
    確かに、彼が言った通りの方角に、小さな人工物の反応が映し出されている。
    航行に邪魔な大きさではないので、精密な観測を行っていたCRV02に言われなければ、
    小惑星か何かの屑かと思い込んで見落としたままだったに違いなかったはずである。
    とりあえず、敵意のある存在でなかったことに胸をなで下ろし、
    CRV01は画面の隅に追いやられたCRV02の映像へと目を向け直した。
    「…まぁたどっかの海賊(バカ)がばらまいた機雷とかじゃないでしょうね」
    「違います。兵器ではありません。というより…旧型の緊急脱出ポットのような形状ですね。」
    こちらではその存在を感知する事しかできない遠方の小物体にもかかわらず、
    恒星観測用の設備を持つCRV02の側は、既にその物体の外観まで確認できているようだ。
    航行用設備の拡充を一人心に誓いつつ、近隣で起きた宇宙船事故情報を一読すると、
    CRV01は困ったように首をかしげた。
    「脱出ポットだとしたら、こっちから呼びかければ反応するんじゃないの?」
    「先程から繰り返し確認信号を送っています。しかし……やはり無反応のようです。
    ポットのシステムも乗員も機能停止(ダウン)してるのかもしれません。」
    「…放って置くわけにいかないわね。CRV02、回収するわよ!
    「了解(ラジャ)」

    哀れな遭難者を救うべく方向を転換したPalumbus号は、恒星観測軌道を離れると、
    電磁プラズマの青い光をひいたまま、恒星系内を滑るように動いていく。
    やがて、メインデッキのスクリーンにもポットの姿がはっきりと映し出される距離に
    まで近づいたとき、スピーカーからCRV02の押し殺したような呟きが零れていた。
    「…酷い、ですね。恒星の磁気嵐に巻き込まれたのでしょうか。」
    「そうね。しかも随分旧型のポットだし、いったい何百年宇宙を漂ってたんだか…」

    船に近づいてきたのは、所々内部構造がむきだしになったボロボロのポットだった。
    しかも、現在普通に見られるような構造ではなく…技術史データブックの挿絵に
    記録されているような、一目で古い時代の物とわかるようなもの。
    二人は互いに険しい表情をスクリーン越しに向かい合わせていた。
    「どうしましょうか。これでは中乗員も無事ではないでしょう。
    「でも、遭難ポット見つけた以上、回収しないと宙航規則に反しちゃうわ。」
    気は重いけどね。とおどけた口調で付け加えるCRV01に頷いてから、
    CRV02は転送ビームの照準を漂うポットへと向けた。
    「第2格納庫に引き上げます」
    「任せたわ。」
    新型バサード・ラムスクープと重水素核融合炉。
    通常インパルスエンジンと独立したワープドライブを備え、
    太古に母星の空を自在に飛んでいたという生命を思わせる優美な造形美。
    そんな売り文句に飛びついて、大枚はたいて手に入れた愛機ではあるが…
    員が二名しかいない以上、船長(キャプテン)であろうとも雑用をこなさなければならない。
    ボロボロのポットから、遭難者を『回収』するという。考えただけで気の重くなる
    作業を前に、CRV01は気合いを入れるかのように両手で両頬をパチンと叩いた。
    そしてそのままシートから勢いよく立ち上がると、深紅のジャケットの裾をなびかせながら、
    CRV01は厳しい表情のままポッドが転送されてくる格納庫へと足を向けた。


    CRV02が格納庫へ入ると、そこには転送されてきた黒こげのポットと、
    先程までの気の進まなそうな表情など消し飛んだように真剣な面持ちで
    ポットの側面へとへばりつくCRV01がいた。
    「大変よCRV02!」
    CRV01は、その鳶色の瞳を輝かせながら言った。
    「航行機能やらなにやらは破壊されてるけど、中から動力反応があるの!」
    「なんですって?」
    動力反応があった、ということは中の乗員はまだ活動しているということだ。
    にわかに信じがたい話ではあったが、この状況でわざわざ彼女が嘘をつく必要はなく、
    何より、真剣さの中にも喜色が混じった表情で、ポットを開けようと奮闘している
    その表情こそが一番真実を物語っている。
    「内部の機能は動いてるみたいなんだけど、外側と扉は完全に壊れてるのよ…
    …まぁ仕方ないか。扉のロック部分を発破するから、ちょっと離れてて」
    忠告に従い、CRV02がポットの正面に置かれた積み荷の陰に身を寄せると
    CRV01は用意した火薬を扉の周囲に仕掛け、自らも後方に隠れるように身を潜めた。
    「聴覚センサやられないように、塞いでなさいよ!!3・2・1・Accendo(点火)!」

    大音量の破裂音と共に、勢いよく周囲に装置の破片が飛び散ってい
    破片が周囲にぶつかる乾いた音が止むと、ギィギィと重い金属が軋むような音が響き、
    次いで、轟音を立てて分厚い扉が格納庫の床へと転がった。
    「…これでいいわ。CRV02、中のお客さんを外に出してあげて」
    ポットの陰から顔をのぞかせ、扉が無事外れたことを確認した鳶色の瞳が、
    明るい声で青い瞳に語りかける。
    しかし、既に内部が見えているはずの相手は何故かぴくりとも動こうとはしなかった。
    「CRV02?どうしたの?」
    再度の問いかけにも青い瞳は反応を返さず、ただ、開いたポットの入り口を
    呆然とした表情で眺め続けるだけのCRV02に、不審そうにCRV01が尋ねる。
    「さっきの爆音で聴覚やられたんじゃないでしょうね?だから塞いどけって注意…」
    「そんな……これは……」
    ようやく絞り出された声は、普段の彼からは考えられぬほど、ひどく動揺している。
    これはただ事ではないと感じ取ったCRV01が、直ぐさまポットの内部をのぞき込み…
    そして、CRV01もそのまま言葉を失った

    ポットの中にはギッシリと見たこともない装置が詰め込まれていた
    それら微弱な碧い光を零す幾つかのモニターと複数のパイプの中央には、
    内面を霜で覆われた透明なカプセルが埋もれるように設置されており、
    さらにそのカプセルの中には、丸くなって眠る、一人の幼い少女の姿が見える。
    その少女の顔半分を覆うように取り付けられているのは呼吸を確保するためのマスク
    モニターの一つには、疎らではあるが規則正しい波が描かれている


    間違いない。この少女は、彼らとは異なる存在。
    遙か昔、過酷な環境での作業に従事させる為、彼らを製造し、
    彼らを支配し、そして…ある時、彼らを残して泡沫のように消えてしまった…
    「……本物の…『ニンゲン』……?」




    *****




    コロニーの管制室からPalumbus号のメインデッキに戻ってからも、
    何処かさえない顔つきのCRV02にCRV01は首をかしげた。
    「CRV02?」
    呼びかけに、CRV02はなんでもないというように、静かに首を振ると小さく呟く。
    「…いえ、ミクをみつけた時のことを回想していました。」
    「そっか…冷凍睡眠を解いてから5年だったっけ。…随分と変わるものね」
    「『人間』は成長、しますから。もう何年かは同じペースで成長するようですし。」
    額にかかった焦茶の髪をかき上げて、CRV01は大きな果実にかぶりつくミクを見る。
    「ミクは女の子だから、最終的には私みたいな姿になるんだっけ?」
    そう問いかけられたCRV02は、その乳白色の細い指を唇に当てると、
    しばし考え込むような仕草をみせながら、目前でその立派な胸を張るCRV01と、
    口いっぱいに物を頬張るミクを交互に見つめ…
    やがて畏まった表情で「個体差はあるようですけどね。」とだけ音にした。
    おかしそうに笑うCRV01につられ、自ら苦笑していたCRV02だったが、
    ふと、その視線を落とすと静かな声で言葉を続けた。
    「そう。そして成長が止まった後、老いて…やがて死に至ります。」
    笑いを止めたCRV01の横で、青色の瞳がそっと伏せられる。
    「ミクが死んでしまう前に、『人間』のもとへ送り届けられるといいのですが…」


    それは、ミクを見つけてからの彼らの旅の目的であり、唯一つの願いだった。

    ミクが乗っていたポッドは旧式でボロボロだったが、内部機構は生きていたため、
    ポッドが母船から切り離されたのは、人間が消えた『失踪』以後だと判断できた。
    それどころか、彼らの常識からすれば、そのずっとずっと後の時代まで、
    少なくともミクとその家族はこの宇宙の何処かで存続していたはずなのだ。

    二人は旅の目的を、宇宙探査から『人間』探しへと切り替えた。
    しかし、当然のことながら、旅は順調には進まなかった。

    時間と共にどんどん劣化していく、生きていた『人間』の痕跡。
    彼らの世界に『人間』の情報はほとんどなく、当然行く末を知るものなど存在しない。
    僅かに残された人間用のコロニーも、とう昔に崩壊しているか、
    今回のように内部に残ったプラント達に浸食され、崩壊を待つばかり…
    どこを探せど『失踪』前のデータはほとんど残されておらず、
    今まで幾度無駄足を踏んだことだろう。

    そして、ミクの存在自体も、旅の足枷となっていた。

    彼らに比べ遥かに弱い人間の、しかも子供。
    定期的に水分養分を補給し、適切な環境を保たなければすぐに弱ってしまう。
    当然、長期に渡る過酷な旅路に耐えられるはずもなく、
    度々環境の整っているコロニーや惑星におりて休息を取らねばらならない…

    時間だけが無為に消費されていく旅路の中で、ミクの成長は
    彼らにとって至上の喜びでありそして耐え難い恐怖でもあった。


    「…生きたコロニーさえ見つければ…
    そこに『人間』を見つけるできるかもしれない。」
    CRV01は、CRV02に向けて、と言うより自らを言い聞かせるように声を出す
    「でも、それを一つ一つ調べていくって言うんだから、時間がかかるのは当たり前。
    ミクを老いないようにするとしても、冷凍睡眠の技術は今では廃れてしまった…」
    「…わかっています、CRV01。」
    「何がわかってるって言うのよ…」
    顔を上げずに返された言葉には怒りが混じっていた。
    「わかってるなら何故今更そんなことを言うのよ、CRV02…
    あの時、私が!不用意な発破さえしなければ…」
    前髪をくしゃりと握りしめて、CRV01はセラミックの奥歯を噛みしめた。

    ミクを発見した直後、呆然とする彼らを正気に返らせたのは、
    ポット内部の機械が出した緊急アラームの音だった。
    冬眠装置の機能停止を告げるたどたどしい合成音声に驚く二人が見つけたのは
    筐体に刺さった扉の破片と、そこから漏れ出している大量の液体。
    おそらく、扉を発破した際にその破片の一部が内部を傷つけてしまったのだろう。
    悪いことにその破損した箇所は、装置全体の駆動に関わる重要な場所だったらしい
    その後まもなく完全に機能停止した冬眠装置は、CRV01の必死の修理もむなしく
    文字通りのがらくたとなって現在Palumbus号の格納庫に転がっている。

    「CRV01。あの時、無理矢理ミクの冷凍睡眠を解除したのは私です。
    そもそも、冷凍睡眠の解除の方法もあれで良かったのか、確証がありません。
    正しくない解除方法によって機械が破損したとも考えられます。」
    「そうだとしても、破損さえなければ、慌ててミクを出すこと無かったわ!」
    それほどデリケートな装置が入っていたにも関わらず、安易に発破を行った事を
    CRV01は自らの判断ミスだと強く後悔していた。
    彼女のミスによって貴重な技術が失われてしまったのは事実だが、
    あの状況においては仕方のないことであるし、なにより、失われてしまった以上、
    後悔したところで技術が戻ってくるわけでもないことはCRV01自身が一番理解している。
    それでも、CRV01は、同型機より遥かに責任感が強く…悪くいえばこだわりが強かった。
    長年の経験からそれを熟知するCRV02は、かける言葉がなく、ただ沈黙する他ない。

    「だめっ!!」

    気まずい沈黙を破ったのは…ミクだった。
    「おにいちゃんも、おねえちゃんも、ケンカしちゃだめ!」
    CRV01とCRV02の間に両手を広げ、立ちはだかっているつもりなのだろう。
    精一杯背を伸ばし二人の顔へ向けるその瞳には、涙を浮べている
    「ミク…」
    「ケンカしちゃだめー…」
    耐えきれなくなった涙がぽろぽろと真っ赤になった頬の上をこぼれ落ちた。
    幾度もしゃくり上げ鼻をすすり上げるミクを、CRV02は抱き上げ背をなでる
    「大丈夫。…CRV01とはケンカをしていたわけではありませんよ」
    それはミクがもっと幼い頃。理由もなくむずがる彼女に困り果てたCRV02が、
    たまたま発見した旧い資料に残る人間の親子の図を真似て以来、
    ミクが機嫌を損ねる度に繰り返された動作だった。
    理由も、原理もわからないが、とにかくこの動作をすると、ミクは安心するらしい。
    大きくしゃくり上げる声が徐々に小さくなるのを聞いて、二人はひとまず胸をなで下ろした。
    やがて、その図の通りに抱き上げるには少し大きすぎる身体を片腕で支えながら、
    CRV02は顔だけをCRV01の方へと向け直す。
    「『恐怖』と『後悔』を感じているのは、私も同じです。CRV01。
    でも、CRV01がポットを破壊して、私が冷凍睡眠を無理に解除したおかげで
    生きているミクと、一緒に旅をすることができるようになりました。」
    言葉を切って、CRV02は嗚咽の収まってきたミクの方へと視線を移した。
    「それはそれで、素晴らしいことだとは思いませんか?」
    無機質なはずの青い瞳に穏やか微笑をうかべてCRV02は問いかける。

    CRV01は壊れ物に触れるかのように、
    ミクの目尻にたまった涙を細い指で拭いながら静かに語りかける。
    「…ねぇ、ミク?」
    「…なに」
    「私と、CRV02と…共にいること…辛くない?
    一人だけ、変わっていくことが、怖くないの?」
    すんすんと鼻をすすってから、ミクはCRV01を、不思議そうに、見上げた。
    「ミク。つらくないし、こわくないよ?
    おねえちゃんはミクのためにずっとお船をそうじゅうしてくれるし、
    おにいちゃんはミクにいろんなことをおしえてくれるもの。
    二人ともいっしょにあそんで、ごはんたべて、あたまなでてくれるでしょ?」
    撫でられている感触を思い出したのか、満面の笑顔を浮かべてミクは続けた。

    「だからね、ミク。おねえちゃんとおにいちゃんのこと好きなの。
    わたしが『にんげん』でふたりがちがっても、好きなの。ほんとだよ?」

    まだまだ「すきなところ」を続けそうな言葉を一段落させ、CRV02はミクへと問いかける。
    「ミク。我々との約束を覚えていますか?
    『ミクのほんとうのお父さんとお母さんをさがしに行こう』と、言ったときの約束です。」
    「うん!覚えてるよ!『お父さんとお母さんをみつけるまであきらめない』の!」

    すっかり元気を取り戻したミクにCRV02は苦笑した。
    「幼い人間に記憶させておいて、我々が忘れるわけにいきませんよ。CRV01。」
    「…そうね。その通りだわ。」
    大きく頷いたCRV01の表情が、何処か好戦的な、いつものそれへと切り替わる。


    「さぁ、そうとなったら気を取り直して、次のコロニー探すわよ!!」
    「えぇ?もういっちゃうの?」
    「ここには、『人間』は居ないようですからね。」
    ミクはCRV02の腕から下ろされながら口をとがらせて不満を零した。
    「やだ!赤いのおいしいから、もっとたべたいの!!」
    さっきまでのシリアスな雰囲気はどこへやら、いつもの調子のわがままに
    CRV01とCRV02は思わず顔を見合わせ、そして同時に破顔する。
    よほど赤い木の実がお気に召したのだろう。
    かといって、何時までもここに滞在するわけにも行かない。
    時間は有限なのだと、CRV01が忠告しようとするのをCRV02はほほえみながら遮った。
    「そうですね。ここで時間を潰すのも構いませんが…
    『人間』が暮らしてるコロニーにならば、もっとおいしい物がたくさんあると思いますよ?」
    「ほんと?…じゃぁ、あたし、はやくそのコロニーに行きたい!」

    ぱぁっと瞳を輝かせるミクに笑いかけ、CRV02がCRV01に目配せをした。
    「と、我らが『人間(マスター)』がおっしゃっておりますよ。CRV01。」
    「了解よ、CRV02。確かに我々はマスターのご意志を尊重しないといけないわ。」
    畏まった調子の言葉に続いて、メインデッキに明るい笑い声が響く。



    彼らは気付いているのだろうか?
    人間に似せて作られた人型機械(オートマトン)に過ぎない彼らが、
    完全な知能を持ってはいるものの、本来表面的にしか感情を持てない彼らの人工頭脳が、
    彼女、ミクという特異な存在に触れることによって、
    僅かにだが、思いもかけぬ方向へ、『成長』を始めていると言うことを…



    「さぁ、Palumbus号発進よ!!」
    発進~!と続けるミクを耐衝撃シートへ固定すると、CRV02は静かに頷いた。
    CRV01はその姿を一段高い操縦席から確認し、手元のレバーを強く押し込んだ

    次の瞬間その船体はは青い光に包まれ、一瞬のうちにその宙域から旅立っていった。



    宇宙船Palumbus号。 その果てのない航海はまだまだ始まったばかり…





    原形留めぬ元ネタは説明不要のあの曲と昔某雑誌で見たSF漫画などなどなど
    palumbusは羅語でハトです。また何のひねりもなく…
    (新大陸発見者とされる「コロンブス」の名前の語源になった説もあるらしい・余談)


    何らかの原因で突然人間が居なくなってしまった宇宙でのお話。
    兄さんと姉さんは、成長や、死の概念がないロボットとか人工生命的な何か
    電気羊的表現だとレプリカントのような物だと思います。

    技術に長けたパイロット姉さんと、知識に長けた研究者兄さんは
    共に宇宙船Palumbus号で終わりのない宇宙探査を行っている最中にミクを拾い、
    慣れぬ子育てに右往左往しながらも、宇宙のどこかにいるかもしれない人間達に
    迷子のミクを届ける為、人間を、その痕跡を捜す旅へ、
    後に伝説と謳われる旅路へと出発したのです…
    (カイメイみたいだけど、恋愛要素無しの家族物のつもりなんだぜ、この作者)


    ちなみにミクが発見された時は見た目5歳ぐらい(この話では10歳前後)ですが
    冷凍睡眠状態でどのくらいの期間宇宙を漂ってたかは謎。
    実はとんでもない高齢かもしれない…ボカロ創作最高齢ミクを狙います!
    (それこそまさに誰得)



    さて、今更だがPV作者様と秦野P他の方々に土下座してこよう。

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